UI/UX

UXピラミッド – UXデザインの正しい評価方法 –

前回の「UXハニカム – UXデザインの正しい品質評価方法 –」では、サービスやプロダクトのUXデザインを評価する際に一般的に用いられている、UXハニカムを活用した方法を紹介した。加えて、実はもう一つユーザー体験のクオリティを測る方法がある。

ユーザー体験を構成する3つのポイント

消費者がサービスを受けるとき、ユーザーがプロダクトを利用するときに受け取る体験の質を高めるのがUXデザイナーの仕事になる。そして、その体験を左右するのが、1. 見た目の品質 (Look), 2. 感覚の品質 (Feel), 3. 使いやすさ (Usabilitu) である。大きく分けてこの3つの要素のクオリティが高いほど、ユーザーに対してより優れた体験を提供することが可能になる。

実用性と利用感覚を測るUXピラミッド

UXハニカムに加えて、もう一つのUXクオリティを測る手法としてUXピラミッドがある。6つの階層で構成され、下部の3つが実用性。そして上部が利用時の感覚を示す項目になっている。
  • Task - 目的達成可能 (レベル1-3)
    • Level 1: FUNCTIONAL (USEFUL) - 機能的である
    • Level 2: RELIABLE - 信頼できる
    • Level 3: USABLE - 使いやすい
  • Experience - 心地良い体験 (レベル4-6)
    • Level 4: CONVENIENT - 便利である
    • Level 5: PLEASURABLE - 楽しい・心地よい
    • Level 6: MEANINGFUL - 価値がある
ユーザー体験として、下層部が必要最低限の利用価値、そして上に上がるにつれ感情に訴えるプロダクトとなる。総じてLevel 1-3は客観的な評価、Level 4-6はユーザーの個人的な感覚での評価になる。従って、1から3は社内UXレビュー、4-6はユーザーレビューで評価することが一般的。それでは、それぞれの階層における項目をみてみよう。

Level 1: FUNCTIONAL (USEFUL) - 機能的である

"ちゃんと機能するか"
  • バグやエラーがない
  • 現代の動作環境に対応しているか
  • 主な機能が実装されているか
  • 基本的なアクセシビリティをクリアしているか

Level 2: RELIABLE - 信頼できる

"見つけやすく正確であるか"
  • ロードスピードに問題がない
  • コンテンツが最新のもので正しい内容である
  • 利用されているデータが信用できる
  • パスワードのリセットが可能である

Level 3: USABLE - 使いやすい

"無理なく使えるか"
  • ユーザーを混乱させない
  • 探しているものが無理なく見つかる
  • マニュアルやヘルプを使わなくても良い
  • "裏技"を使わなくても良い
  • サポートやコールセンターに問い合わせが多すぎない
  • ユーザビリティにおける基本項目がクリアされている

Level 4: CONVENIENT - 便利である

"個人的に求める内容を手軽に提供してくれているか"
  • ユーザーが使いたくなる
  • 何度も使いたくさせる要素がある
  • 他のユーザーに勧めたり、ポジティブなレビューをしたくなる

Level 5: PLEASURABLE - 楽しい・心地よい

"周りの人に教えたくなるぐらい楽しい体験ができるか"
  • ユーザーが時間を費やす
  • ユーザーが口コミで広げたくなる
  • ユーザーの日常生活の一部として存在する

Level 6: MEANINGFUL - 価値がある

"個人的にも社会的にも重要な価値を感じられる"
  • ユーザーの生活や人生に大きなインパクトを与えている
  • 世の中に対してポジティブな影響力がある
上記の6つの階層のうち、実は世の中の多くの商品やサービスはLevel 1-3までしかクリアしておらず、Level 4以上を達成できるかがヒット商品を生み出せるかどうかの鍵を握っている。そのためには、物作りをする側が"問題なく使える"だけで満足せずに、"心地よく使える"レベルまでの作り込みを必要になってくるだろう。

UXピラミッドを活用したUX品質評価実例

では上記のピラミッドを実際に活用してユーザー体験を評価する例を2つ紹介する。

Case 1: WebプラットフォームにおけるUX評価チェック項目

Functional (Useful) - 機能的である:
  • ニーズ 目的を果たすために必要なことが簡単にできるか
  • スピード 低速度でも極端に遅くなっていないか
  • エラーレス エラーとならない工夫がされているか
Reliable - 信頼できる:
  • 安全性 セキュリティ面などで安全に使うことができるか
  • 検索性 検索サイトから見つけることが可能か
  • 安定性 安定したパフォーマンスが得られるか
Usable- 使いやすい:
  • 操作性 ストレスなく目的達成のための操作ができるか
  • 一貫性 ナビゲーション/操作は一貫してわかりやすいものとなっているか
  • マルチデバイス対応 タブレット端末のサイズやタッチ操作でも使いやすいか
Convenient - 便利である:
  • 視認性 文字やアイコン、表示内容はわかりやすいか
  • ヘルプ性 困ったときの解決方法がすぐに見つかるか
  • 簡潔性 文言は簡潔でわかりやすいものになっているか
Pleasurable - 楽しい・心地よい:
  • 直感性 直感的に使用することができるか
  • 連続性 途切れることなく一連の体験を提供できているか
  • 容易性 二度手間や煩わしさを排除できているか
Meaningful - 価値がある:
  • 気づき 気づきを与えることができているか
  • 時代性 時代にあったデザインや操作方法を取り入れているか
  • 心地よさ 利用していて心地良い、ワクワクする要素があるか

Case 2: TESLAディーラーでの顧客体験評価

もう一つのUXプロセスの活用ケースとして、Teslaのショールムでの顧客体験があげられる。 Level 1. 機能的なレイアウト ショールームのレイアウト設計を効率的に行い、プロダクトを学ぶために必要な機能を充実させている。 Level 2. Teslaブランドと専属エキスパート セールスマンではなくプロダクトエキスパートを配置し、Teslaのブランドを前面に押し出すデザインで信頼性を獲得。 Level 3. 使いやすさを向上させるタッチパネル ショールーム内にはインタラクティブに機能するタッチパネルを設置し、来客者のユーザービリティを向上させている。 Level 4. なんども通いたくなる要素 アメリカでは自動車ディーラーの顧客体験に対して良いイメージを持っている人は少ない。そこにいるセールスマンがかなり面倒な存在だからだ。しかしTeslaのショールームでは、エキスパートと呼ばれるスタッフがフレンドリーに対応し、売り込みは一切ない。最新のプロダクトと触れ合えることもあり、何度でも通いたくなる。 Level 5. エンタメ要素 希望すればエキスパートがアプリやオートパイロット機能の実演などもしてくれる。これが楽しくて、ショールームにいる時間のクオリティが高くなる。一般的なカーディーラーとは異なる感覚を得ることができる。 Level 6. その存在自体がイノベーション TESLAのショールームの役割はあくまでユーザーにプロダクトを思う存分知って、体感してもらう事。ややこしい販売に関するプロセスは、全てオンラインでまるでEコマースサイトでポチッと購入できるような形になっている。Teslaが生み出しているプロダクトに加えて、この体験自体も今までのディーラーの常識で考えるとイノベーションと言える。

ユーザー体験を最大化させているTeslaのプロダクトと顧客体験

TESLAというブランド自体がインスタグラムに載せたくなるくらい存在価値が高いが、そのショールームのレイアウトもデザイン・設計にこだわり顧客体験を大幅にアップさせた。車両の展示方法や、インタラクティブなフォラットパネルの設置、異なるオプションの展示など、全ての空間デザインにUXデザインのコンセプトが活用されている。 このようにTESLAは既存のマーケティング手法とは一線を画する戦略を取っているが、ショールームという実店舗やオンライン購入サイトのUXをとことん追求することで、革新的な商品をただの”モノ”で完結させてしまうことなく”体験”というフルパッケージで提供し多くの人の生活や人生に大きな影響を与えている。

これからのビジネスの成長に不可欠なUXデザインとは

これらの優良スタートアップがマーケティングに活用しているという”ユーザー体験 (UX)”とは果たして何なのか。その言葉の理解度は、UXという言葉がよく使われるようになった今でも曖昧だと感じる人もいるのではないだろうか。 おさらいをすると、UX(ユーザーエクスペリエンス)とは”サービス利用者の体験そのもの”のことである。そこにはUI、デザイン、マーケティングなど様々な観点によるニュアンスが入ってきてその複雑さが増している。 参考: 【UXデザイン】コンバージョン率を向上させる7つの方法 UXデザインを活用したマーケティングは、既存のマーケティング戦略の理論に似ている部分もあるが、タッチポイントと呼ばれるそれぞれの体験の点の部分は精度が高ければ高いほど、正しいUXを提供できているといわれ、正しいユーザー体験 (UX) の提供ができているということが長期的なビジネス成長の際に大事になってくるのである。 つまりUXこそが、営業の役割を果たすマーケティングの大事な部分になっているのである。 関連記事: UXハニカム – UXデザインの正しい品質評価方法 –  

筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

UXデザインの正しい品質評価方法

ユーザーエクスペリエンス (UX) デザインを少しでもかじったことのある人であれば、ヒットするプロダクトやビジネスの成功におけるユーザー体験の重要さが理解できると思う。「これからの企業に不可欠な三種の神器とは」でも説明されている通り、グローバル規模で成功している企業が提供する商品やサービスの裏には、優れたユーザー体験がその成功の秘密として隠されている。 また、「2017年からはユーザー体験こそがマーケティング戦略の主流になる ~UX for Marketing~」でも語られている通り、現在話題になっているスタートアップ企業やユニコーン企業も正しいユーザー体験を通じて多くのユーザー獲得につなげている。

UXにおいて何が優れているのか?

では、そもそもUXにおいて「優れた」とか「正しい」とされる要素は何であろうか?一般的にはユーザー側から見ると、利用していて”心地良い”とか”楽しい”などの要素。そして提供側から考えると”ビジネスの目標を達成する”ことが優れたユーザー体験の一つの目標となる。

UIとUXの評価軸の違い

UXデザインを考える際に、頻繁にユーザーインターフェース(UI)との比較をされる。これはUIがUXに及ぼす影響力が大きく、場合によっては、ごっちゃになるケースが多いからであろう。今一度UIとUXにおけるざっくりとした評価軸の違いを示しておく。
  • UIのクオリティは、ユーザーが費やした時間量に反比例
  • UXのクオリティは、ユーザーが費やした時間の濃さに比例
また、優れたUXがもたらす主な価値としては下記が挙げられるであろう。
  • 対ユーザー: 使いやすい
  • 対ビジネス: 売り上げが上がる
  • 対ユーザー+ビジネス: 期待値が合致してる
- ビジネスにおけるユーザーエクスペリエンス (UX) の重要性

優れたデザインが優れたユーザー体験を生み出すとは限らない

UX”デザイン"という単語から、それが一つのデザイン領域であることがわかる。現にここ数年”UXデザイナー”と呼ばれる役職に注目が集まり、多くの企業も採用を急速に進めている。しかし、実はUXデザイナーに求められるスキルやその仕事内容は、見た目を美しくすることが主だった仕事であるデザイナー職とは大きく異なるため、その評価方法がはっきりとされていないケースもある。 結論から言うと、UXデザインの価値はユーザーが決める。下記の写真を見ても分かる通り、いくらデザイナーがこだわりを持ってデザインしたとしても、それがユーザーに受け入れられなければ正しいUXデザインを行なったことにはならない。

優れたユーザー体験とロジックは相反することがある

UXデザインのややこしいところは、それがユーザーの心理に密接しているところであろう。"見た目が美しい = 優れたUX"になるとは限らないし、"目的達成のための時間短縮 = 優れたUX"とも限らない。「ユーザーのストレスを減らし、費やした時間の価値を上げるが最終目標になるのであるが、ときにそれは机上のロジックと相反することもある。 その良い例が、ヒューストン空港における到着ゲートから手荷物受取所エリアまでの設計事例である。 以前より、この空港では手荷物引渡所での待ち時間が長いという苦情を受けていた。スタッフ増員など対応していたにも関わらず、なかなか問題が解消されないという課題を長期間に渡り抱えていた。 そこで、ユーザーのエクスペリエンス改善のために、わざと手荷物引渡所までの距離を延ばし、客に空港内で長い距離を歩かせるようにした。これにより移動距離と時間が伸びたものの、手荷物受取所での待ち時間が短縮されたことで、顧客のストレスが減り、顧客体験が解決したという結果となった。

UXの最終的な役割とは?

では、ユーザー側と企業側の双方向から考えて見た場合のUXの最終的な役割は何になるのであろうか?btraxが提供する「イノベーションブースター」のカリキュラムの一環であるUXデザインセッションでは、下記のように表現される。 The Role of UX = To Attract Users’ Emotions to Produce Business Results (ユーザーの心を掴み、ビジネスに繋げる) 理解はできるが、あまりにも簡潔すぎてよくわからない? では、より具体的な評価方法を考えて見る。

UXハニカムを利用した評価手法

今回は、UXデザインの業界でスタンダードとして利用されている評価方法の一つである、UXハニカムを活用してのその評価方法を説明する。このハニカムはUXの価値を6つの異なる評価軸に合わせて評価し、そのクオリティを図っている。 下記のそれぞれの項目に対して5段階評価をし、総合得点でUXの価値を評価することができる。

1. Useful - 役に立つ

提供されるプロダクトやサービスがユーザーの役に立っているか。彼らのニーズを満たしているか。もしそれがユーザーの目的を達成していなければ、ユーザー体験としてはレベルが低い。

2. Desirable - 好ましい

プロダクトの見た目や雰囲気がユーザーにとって好ましいかどうか。ここに評価軸においては"デザイン要素"はなるべく少ない方が優れているとされる。

3. Accessible - アクセスしやすい

体の不自由な方や、異なる制限のあるユーザーにとっても使いやすい体験がデザインされているかどうか。色盲の方でも認識しやすいサインなどもその例の一つ。

4. Credible - 信頼できる

企業やプロダクトが信頼できるものであるかどうか。例えば無名な企業よりも、著名なブランドの製品であれば、最初からユーザーの心理的ハードルが下がり、自ずと利用体験がよくなりがち。

5. Findable - 探しやすい

情報やコンテンツが見つけやすい。短期間でユーザーが求める情報にたどり着ければ、利用している際のストレスが下がる。サイトであればページの構造、駅や公共の建物であれば、目的の場所に辿り着きやすいなど。

6. Usable - 使いやすい

そしてユーザビリティの高さ。利用していて必要以上に複雑で使いにくい場合はユーザー体験の価値が下がってしまう。例えば家電製品であれば、説明書を読まなければ使い方がわからない時点で減点対象になるであろう。

One more thing - そしてもう一つの価値基準

そして、btraxが提唱するUXの評価におけるもう一つの価値基準を紹介する。これはユーザーが気づかないうちに提供されるが、実は大きなメリットとして評価されるべきポイントだと考えている。

Ex. Added Value - 付加価値

優れたプロダクトには必ず主となる価値に加えて、ユーザー体験をアップさせる付加価値が隠されている。

Case Study - Tesla Model S

Teslaのモデル Sを例に考えてみよう。この車両のドアハンドルの部分は走行中やオーナーが離れている際には"引っ込む"仕組みになっている。これはデザイン的にかっこ良いし、空気抵抗を減らす意味合い、そして何より、近づいてきたときに"ぴょこっと"出てくる感動を生み出す。 実はこれには大きな付加価値もある。盗難防止に繋がるということだ。例えば鍵を壊してこの車両を盗もうとしたところで、ドアのとってをつかむことができなければドアをこじ開けることが容易ではなくなる。それだけでも車泥棒のモチベーションを下げる効果があるだろう。

Case Study - August SmartLock

もう一つの例として、btraxのSFオフィスでも利用しているAugust SmartLockの場合を見てみよう。このスマートロックは、スマホを活用してドアの鍵を開けることを主の目的としている。Apple Store史上初めてApple製品以外で店頭ディスプレイされたことでも話題になったプロダクトでもある事から、そのUXの高さが評価されている。 このプロダクトの付加価値は、利用ログにあると思われる。スマホで鍵が開くだけでもかなり利用価値が高いのであるが、その"隠れ機能"がより利用価値をアップさせている。アプリ内で見ることができるUser Activity Logは、複数のユーザーの利用ログが記録され、誰がいつ利用したかがわかるため、ちょっとしたセキュリティー的役割ややタイムカード的役割も果たしてくれる。

これからより高まるUXデザインの価値

プロダクトのサービス化を進める際には、そのプロダクトがユーザーに与える体験、いわゆるユーザーエクスペリエンス (UX)が非常に重要なファクターとなってくる。 そして、世の中で”イノベーション”と考えられている商品/サービスのその多くが、デザイン的プロセスに起因する部分が大きいと考えられる。実にユーザーエクスペリエンスが劣るプロダクトで人々がイノベーションの例として挙げるものはほぼ無いと言っても過言ではない。 関連記事: DESIGN Shift: これからのビジネスはモノより体験が価値になる  

筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

Google HomeやAmazon Echoに学ぶスマートプロダクトのUX設計

AppleのパーソナルアシスタントSiriを搭載した「HomePod」やGoogle Assistantを搭載した「Google Home」、音声アシスタントAlexaを搭載した「Amazon Echo・ Dot」が続々と発表・発売されている。これらは、ユーザーの行動パターンや人格、使用する言葉のコンテクストを学習して、使うほどに個人に対応していくスマートプロダクトである。 関連記事:スマートスピーカー戦争: Google, Amazon, Apple 勝つのはどこだ? 多くの製品が発表されるにつれて、ユーザーのプロダクトへの期待が大きくなっている中、ユーザーはプロダクトに人間と同じようなコミュニケーションを期待している。一方で技術的な制限は常に存在する。そのため、デザイナーやスマートプロダクトの開発者はユーザーのエクスペリエンスに対する期待をしっかりと管理しなければならない。だからこそ、ユーザーから求められるエクスペリエンスを提供することがビジネスを成功させる上でも大切なことである。

スマートプロダクトとは?

日々の生活中で、わたしたちは有能なスマートプロダクトとそのユーザーインターフェイスに囲まれている。ここでいうスマートプロダクトとは、ユーザーとそれを使用する背景・文脈に関する情報を収集し、その動作をユーザーまたは特定の状況に適合させるように処理する製品として定義する。 例をあげると、太陽が輝いていることを検出すると自動的に閉まるカーテンや、過去に訪れた場所に基づいて、新しい休暇の場所をおすすめする旅行アプリなどだ。基本的に、ユーザーまたはさまざまな背景・文脈の要因に関する情報を収集し、自動的にその動作を適応させる製品である。 ユーザーとスマートプロダクトとのやりとりは、コミュニケーションに似ている。例えば、自然に会話するように音声コマンドを使用して、スマートホームを構成するデバイスにに問いかけると、プロダクトも自然な会話として返答する。そのやりとりは家と会話をしているようだと感じられるだろう。

スマートプロダクトのUX設計が何故難しいのか?

Amazon Echoは、インテリジェントなパーソナルアシスタントAlexaを搭載した音声制御型のスピーカーだ。音楽の選択、ライトの消灯、Amazonの商品やフードデリバリーサービスの注文などをサポートすることが可能である。そして、使うほどに使用者の好みを把握していく。 プロダクトが人間から命令されるより先に物事を自動的に行って完了させてしまう場合、ユーザーはそのプロダクトが自分よりも知性を備えているように感じるであろう。 人間は常に周りの状況を把握し、自発的な行動をとることができる。そのような行動ができるということは、ある程度の知識と経験を持っているということになる。 犬を見たとき、過去の経験から犬がどれくらいの知性を持っているかある程度は予測できる。しかし、まったく新しいスマートプロダクトを見たとき、どれほどのことができるか予測するのは困難だ。 これはユーザーとスマートプロダクト間のコミュニケーションをデザインする際に一番の問題となりうる点である。そのため、スマートプロダクトへの期待がどのような問題を引き起こすのか、考慮が必要なのである。

ユーザーはスマートプロダクトに何を期待しているのか?

ユーザーはスマートプロダクトに対して大きな期待を持っている。あなたはテクノロジーをツールではなく、人間のような存在として扱った経験があるだろうか? 例えば、お掃除ロボットのルンバを掃除のツールではなく、ペットのような存在に感じたり、パソコンが動かなくなったときはパソコンに向かって話しかけたり、ただの物体ではなく知能や感情を備えたものとして扱うような経験である。スタンフォード大学のバロン・リーブス教授とクリフォード・ナッシュ教授は、人々はコンピューターを物体であると認識しているにもかかわらず、人と同じ様に接することが多々あると述べている。 コンピューターが意思のないツールであると認識していても、それが生きているように行動し、意思のある存在であるかのように行動する可能性があると示唆している。では、何故人間は機械に対してそのような行動をとってしまうのだろうか?それは、わたしたちが世界をどのように認識しているのか、心理学の背景から読み解くことができる。人間心理は、人と人との交流の中で発展している。わたしたちは幼いころから物と知識や感情をもつ生物との違いを学習しているのだ。 例えば、交通量の多い道路を横断するときは車が来ているのにもかかわらず、あなたは意図して飛び出すことはしないだろう。生物は自分の危険を察知でき、自ら意思をもって動くことができる。車や信号機は自らの意思であなたに危害を与えるようなことをするだろうか?無生物は自らの意思をで動くことはできない。かつては物体と生き物を区別するのが容易でした。技術開発によって、ラインはよりぼやけてしまってきている。 関連記事: .【前編】ベイエリアの日本人起業家が語る次世代のIoT – AIの駆使と徹底したセキュリティ管理でIoT本来の価値を見出す人工知能 (AI) を仕事に活用する方法 科学の進歩でプロダクトが自発的に行動するように進化している。(実際は自発的に動いて見えるようにプログラムされている。)そのため、ユーザーはプロダクトがまるで生きているかのように接してしまうことがある。ルンバが自ら部屋の誇りをみつけて掃除してくれる、iPhoneの音声アシスタントが天気とおすすめのレストランを提示してくれるなら自分の意見や気持ちを共有してくれる。そのような期待を抱きはじめてしまう。ユーザーはスマートプロダクトができる限界をはっきり理解していないため、無意識に大きな期待を抱いてしまうのである。 さらに、Googleやテスラ、その他日本の自動車会社がこぞって開発を進めているセルフドライビングカーは車自体が運転の制御を行う機能を搭載している。音声で指示を出し、最適な動きをするようになれば、いままで生物と無生物の違いを定義していた「自らの意思で動くこと」という前提がくずれてしまう。 参考:2075年までに実現することはない?TeslaやUberのセルフドライビングカー事情 実際はプログラムによって制御されているにもかかわらず、それが自らの意思で動いているように感じてしまうようになるだろう。

スマートプロダクトをデザインするには

音声アシスタントは人間のコミュニケーションと同様の方法の動作を期待されているが、対話の限界は購入する前には不明確だ。 ユーザーがプロダクトで何ができるか理解していないと、ネガティブなユーザーエクスペリエンスを生み出してしまう。それを避けるためには、プロダクトができることを明確に伝えることが重要である。それはプロダクトのPR、取扱説明書、プロダクトを使っている最中にできないことを音声アシスタントが明確に伝える等、方法は様々だ。 また、スマートプロダクトがユーザーの行動を中断させてしまうことはよいエクスペリエンスとは言えない。例えば、コンテンツを閲覧しているときに大画面で自動で配信されるポップアップ広告は一見、クリック率を向上させる革新的なものだと考えられるが、ユーザーエクスペリエンスの観点から考えるとネガティブな印象を与えてしまう。 文章を読んでいる最中、音楽を聞いている最中、動画を見ている最中に行動を中断させられて満足する人はいないだろう。 スマートプロダクトをデザインするときには、ユーザーが意図しないことを勝手に行うのは避けるべきなのである。スマートプロダクトはユーザーの行動を学習し、会話のコンテクストを理解して適切な動作を行うことが必要である。 上記をまとめると、インテリジェントな製品をユーザーがどのように操作するか、スマートな製品を設計するたびに考慮すべき3点だ。
  1. 製品にできること以上のことをできると言わない AmazonのAlexaは製品を使い始める前の取扱説明書にAlexaへのテスト質問を明記してある。その質問を一通り行うことで、Alexaが何ができるかをユーザーは理解することができる。Alexaが質問が聞き取れなかったり、できないことを指示された場合は「わかりません」、「それはできません」など、しっかり受け答えを行う。使うたびに、Alexaはユーザーの趣向を理解し、ユーザーはAlexaを理解していく。
  2. 製品に何ができるのか、そして現在は何ができるのかを明確に伝える Nestサーモスタットは電源をいれてすぐに最適な温度調節を行うことはできないが、ユーザーが使い始めた最初の1週間で1日の習慣を学習する。それから、その習慣に合わせて温度を調節するようにプログラムされる。NestはそれをWebサイトや説明書に明確に明記してある。
  3. 製品は社会的なルールに従い、ユーザーの行動を中断することはしない 音楽サービスのSpotifyはユーザーの習慣からユーザーの好みに合わせた音楽を提案する。これらの提案はユーザーが望めば簡単に採用されるが、勝手に再生されたりはしない。

まとめ

人間は複雑であるため、どれだけプロダクトが賢くても、要求された文脈を完全に理解することは難しい。スマートプロダクトを設計するときには、プロダクトができること、できないことを明確に伝える必要がある。 ユーザーが全く新しいものにふれるときには、プロダクト側から何ができるのか、どうすればできるのかを正確に提示することは困難である。そのため、ユーザーのコミュニケーションや行動に自動的に適応する製品を作成する場合は注意が必要だ。 そしてユーザーが簡単に動作を停止できるようにしておくことも重要である。スマートプロダクトを設計するということは、創造の限界を知り、日々の生活の予測不可能性なレベルよりも一歩先を行くことなのだ。それはデザインを現代の期待に沿わせ、プロダクトを成功へと導くだろう。 参考:How to manage the users’ expectations when designing smart products *上記の記事はNissho Electronics USAのブログから転載したものです。元記事はこちらから

【編集の眼】Apple社のWWDC17参加レポート

Apple社が、毎年開催している、開発者向けのカンファレンスWWDC(Worldwide Developers Conference)が、今年の6月5日(月)~9日(金)までアメリカのサンノゼで開催された。

MarQ運営会社であるMogic株式会社からも、2名で参加した。基調講演、ARや機械学習などの新技術に関するセッションや新製品の体験会など、積極的に回っていった。

同カンファレンス参加者は、抽選で選ばれた各国からの、約5000人で、メインホールで行われるセッションは常に満席に近い状態であった。

MarQの記事に見られる最新のキーワード、人工知能、音声認識、そして両者によるカスタマー対応について、カンファレンスの内容を紹介したい。

コールセンターやサービス窓口など、様々な業界で対話型の人工知能による顧客対応が進んでいる。例えば、チャットボットの自動応答などである。これは近年音声認識の精度が向上し、自然言語処理能力が高まってきたことが、技術的な背景となっている。

このような顧客対応の課題は、実際に対応を受けたカスタマーがどのように感じるかである。同じ内容を同じ文章で、担当者が発話しても、誰が発話したか、その声の質や大きさ、間の取り方やちょっとした言葉遣いなどで、カスタマーの印象は大きく変わってくる。

それと同様のことが、現在、人工知能による対応にも要求されるようになってきている。機械学習により整合性のとれた返答をただ返せばよいというだけでなく、「親しみを感じてもらえるAI」が、これからのテーマとなると、感じた。人工知能が適切に対応したかだけではなく、その対応にカスタマーがどれだけ満足するかが、重要なのである。

発話内容をデータとして分析し処理する部分をAmazonやGoogleの得意分野とするならば、人間の感情や身体的な動作が伴ってくるUI/UXの部分は、まさにApple社の得意分野である。

同社はその得意分野をよく理解し、“Siri”で「自然な発音」を行うための研究を長く続けている。同じ文章でも、状況に応じて異なった読み上げ方をする様子がカンファレンスでお披露目されていた。さらに、“Siri”は、カスタマーの個人の趣味趣向を理解し、発話内容をパーソナライズしていくことも考えている。

“AmazonEcho”も、ユーザーにより親しみを感じてもらえることを目標としているという話もあり、対話型人工知能の開発にあたっては、「親しみ」がキーワードとなっていく可能性もある。

【関連サイト】WWDC17