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自動ネイルアート機、アパレル法人向けフリマなど:Incubate Camp 10th登壇企業紹介(後編)

国内の有力VCと起業家たちが集まる1泊2日のシードアクセラレーションプログラム「Incubate Camp 10th」が、8月25、26日の2日間にわたって千葉県のオークラアカデミーパークホテルで開催された。イベント概要については、こちらの概要レポート記事をご覧いただきたい。

ここでは18社中9社を紹介する。ほかの9社については前編記事「盛り上がるARスポーツ、内視鏡+AIスタートアップなど:Incubate Camp 10th登壇企業紹介(前編)」をみてほしい

Garage:カーパーツ専門ECのプラットフォーム

2011年の大学卒業後にトヨタ系列でモータースポーツやパーツ関連ビジネスを行うサード(LEXUS TEAM SaRD)に5年間勤務した中山祥太氏が2015年12月に創業したMiddleFieldは、クルマ・カーパーツ専門のオンラインEC「Garage」を運営している。

TechCrunch読者は東京都心部が多いのでピンと来ないかもしれないが(東京のクルマ保有率は40%と低い)、世界的に見ると自動車販売台数は伸びている。保有台数は12億台を突破し、特にアジア新興市場などでは伸びている。そしてその自動車を自分好みに飾りつけるアフターマーケットは日本だけでも1.2兆円、流通しているカーパーツは300万点以上にのぼるのだそうだ。

「これは自動運転の時代になっても変わらない。見落とされている最後のブルーオーシャンだ」(中山CEO)。日本のカーパーツ産業は注目されていて、日本国内だけでなく、将来はアジアにも市場展開できるという。

カーパーツ購入で問題となるのは「ネット上で探せない」ことと「オフラインで買えない」ことの2つ。たとえば、気になるパーツがあったとき、近所のオートバックスに行っても実際の商品が見つからない可能性が高い。一方、楽天やアマゾンといったECサイトは専門のデータベースではないので商品の検索性が悪いという問題がある。網羅的に情報を扱っているのは、いまも紙媒体だ。ネット上のECサイトについても、Web 1.0的なところがほとんどだという。例えばGarageでは自分が乗っているクルマの車種からパーツを検索するといった(2017年のネットユーザーなら当たり前に期待すること)ことができるという。

そこで紙媒体のページを大量に繰りながら作り上げたオンラインの専門ECサイトがGarageというわけだ。現在、1万2000点の商品を扱っている。カーパーツ購入体験のもう1つのペインポイントは、取り付け店舗を自分で探せないこと。そこでGarageでは1500のメーカーと全国9万店の整備工場を結ぶプラットフォームを目指しているそう。現在契約社数は160社で販売手数料は20〜30%。1.2兆円の国内マーケットに続けて、20兆円規模と見込まれる「アジアを制覇したい」(中山CEO)という。例えば、インドネシアの自動車の9割は日本車なので、データベースを英語化するだけで市場を拡大できるのではないかという。中国市場ではGarageと同じビジネスモデルでユニコーンとなったスタートアップ企業があるそうだ。

スマセル:法人間で在庫売買を可能にする繊維・ファッションのフリマサイト

アパレル業界で10年以上の経験を持つ福屋剛氏が2015年3月に創業したウィファブリックが運営するのは、法人間で在庫売買を可能にする繊維・ファッションのフリマサイト「スマセル」だ。福屋CEOによれば、世界中で廃棄されている繊維商品の量は年間8000万トンになるという。

売れ残りの不動在庫は、従来は二束三文で叩き売るか、産廃業者に出して廃棄処分にするしか選択肢がなかった。これを通常流通価格の30〜99%オフという価格で売買するのがスマセル。スマセルではサンプルの取り寄せや条件交渉といった業界の商習慣にしたがったUIでやり取りができるほか、エスクローサービスも利用できるそうだ。

これまで出張と電話・ファックスでやり取りしている業界に対して効率的な素材調達となる手段となる。20世紀の通信手段に依存していたため、売買成立まで2カ月、経費15万円という世界だった。商圏が狭くなりがちで、取扱商品点数が少ない、というのも課題だったという。しかし、「いまやアパレル業界でも誰もがスマホを使っている」(福屋CEO)とスマセルのようなサービスが受け入れられる素地が整いつつあるという。

世界のファッション市場は206兆円規模で、このうち約5%が在庫市場だとすると、約10兆円。10兆円を廃棄処分とせずに再生することができれば、90兆円程度に市場を拡大できるだろうと福屋CEOはそろばんを弾く。いきなりグローバル市場全体の話をするのはやや話が大きい気もするが、国境を超えたほうがいいケースもあるようだ。というのも中古品として流通させることはブランド毀損ともなるので、嫌うメーカーもある。スマセルでは販売条件を「海外のみ」とするなど販路制限ができる機能もあるそうだ。

例えば、あるファッションブランドが在庫アソートを5000枚出したところ、小売店舗も多数抱える大手流通グループが400万円(単価800円)で購入した事例や、大手デパートが高級タオルを単価200円で3000枚買うといった事例が出てきているそうだ。いずれも手数料は20%で、それぞれ80万円、12万円がスマセルの取り分となっている。

スマセルはサービス開始後に登録が150社と拡大していて、出品総額30億円程度まで膨らんでいる。今後は運輸関連企業と提携してグローバルロジスティクスのスキーム構築をしていくという。

INAIL:店舗設置ハードウェアで、15秒でネイルアートを実現

上海でネイルサロン、ヘアサロンを経営していた経験もある木下靖堂氏が創業したBITが提供する「INAIL」は凝ったネイルアートを描くハードウェアを使ったサービス事業だ。大きな血圧計のような箱型のデバイスに手を突っ込むと、ツメの位置や形を3次元的に認識してインクジェットプリンターに近いような方式でアートを描く。INAILによるネイルは人間が15分かかる作業を15秒で終わらせる。フリーハンドで描くよりも再現性が高いビジュアルを実現できる、としている。

過去20年で急成長したネイル市場は2500億円規模になるが、日本人女性のうち3割程度しかネイルしていないという。

顧客から見た問題は、所要時間が2時間半と時間がかかるとこと。8000円程度というコストも普及の足かせになっている、というのが木下CEOの見立てだ。INAILだと時間は8分の1、価格を3分の1で利用できる。一方、サービス提供側からすると、これまでネイルアーティストが持つ技術の伝授が難しいためにサービスを大きくしづらいという課題ががあった。

INAILのビジネスモデルはハードウェア販売の初期導入50万円と月額2万円でデータ配信、1回利用あたり900円など。現在INAILは自己資金で展開しているサービスだが、資金調達を行って初期導入費用ゼロのモデルを構築する予定。すでに東京の二子玉川や大阪の梅田で導入済みで、月商500万円程度のサロン(座席数10席、客数700名/月、客単価7500円)に設置することで40万円の売上貢献となる実績が出ているという。来客者の14%がネイルオーダーをしたという。

2017年4月から営業を開始し、8月には15台を販売。これまで計40台を出荷しているという。ネイル・ヘアサロンなどは全国に30万店舗あって、当面の目標は3000カ所に設置すること。ネイル市場の7%に相当する150億円を抑えて、その20%をレベニューシェアとして30億円の売上を作る。将来的にはネイルアートのコンテンツのマーケットを作ることや、キャラクターやアパレルブランドとの協業も考えているという。

Cansell:キャンセル料のかかる宿泊予約を個人間売買

TechCrunch Japanでも紹介したことがあるが、予約済みホテルの宿泊権を個人間で売買できるプラットフォームが「Cansell」だ。ホテルから届く予約完了メールを専用アドレスに転送するだけで手軽に出品できるのが特長で、ユーザー登録から始めても最短10分で出品できるという。手数料は売買成立に対して15%を売り手から取る。

2016年9月にリリースした当初は月間出品件数は10件程度だったのが、直近では80件程度に伸び、これまで累計366件の出品があったという。昨今のホテル予約のトレンドとして早期割引率が高く、そのぶんキャンセル料が100%となる宿泊サービスが増えているそう。このため、Cansellに出品される宿泊は高単価の予約が多くなっているという。出品されるアイテムのチェックイン日までの日数の平均は26日。少し意外な感じもするが、直前にドタキャンして売られる宿泊権というわけではないという。

これまでは出品しても売れ残った場合は、売り手としては単にゼロになってしまうだけだった。そのため最近新しい取り組みとして「出品」のほかにCansellによる即時の「買取」を選べるようにしたそうだ。すると、7割のユーザーが買取を選んでいて、元値の26%程度で買い取ることができているそうだ。

宿泊サービスの市場規模は4.4兆円。このうち800億円程度がキャンセルに相当すると見ているという。来月にはサービスの正式リリースを予定している。今後は、対象となるアイテムを国内ホテルから、飛行機の航空券、結婚式場予約、レストラン予約など、一定割合でキャンセルが発生している領域に展開することも検討しているという。

uuuo:卸売市場も仲買市場もバイパスしてスマホで繋がる水産市場

祖父も曽祖父も漁業従事者だったという鳥取県出身の板倉一智氏が創業を準備中の「Portable」は、スマホで繋がる水産市場を銘打つ「uuuo」(ウーオ)を11月にリリース予定だ。

水産業・流通では従来から漁港に近いところから始まり、消費地である都市部に向かって、「地方卸売市場」→「地方仲買市場」→「中央卸売市場」→「中央仲買市場」と流通経路があり、このプレイヤー数の多いバリューチェーンの中で最終価格がコスト高になる構造があった。

板倉CEOは「産地にとって安すぎる。中央市場にとっては高すぎる」と問題を指摘。単価3070円で出荷された魚が、小売では7920円となって売られているのが現状という。日本でも有数の漁港である境港を抱える鳥取県出身らしく、板倉CEOは「生産者が不利益を被る構造になっている。これは流通の問題」という。「どこにでも売れる、どこからでも買える」という水産流通の実現を目指していて、uuuoでは15%の手数料を引いても安く仕入れることができるようになるという。

この構造を変えられる2つの時代背景があるという。1つは2008年の卸売市場法の改正で自由化されたこと、もう1つは市場関係者はすでにネットやスマホを活用していること。Facebookなどでグループを作って魚の情報交換などを活発に行っているほか、LINEでグループを使って漁港と魚種、漁獲高からセリの価格を事前に決めるなどのコミュニケーションを行っているそうだ。

uuuoは出品も購入もスマホでできるという。さらに、関連データである市況や漁獲量の相場を見ながら取り引きできるようにするという。すでに漁業関係者がまとめた表データはネット上にあるが、これをグラフで可視化する。

uuuoが既存の水産スタートアップと違う点数はB2Bにフォーカスすること。まずは中国地方を中心に漁業関連者と連携する。国内水産業は2.87兆円市場で、このうち地方の1.7兆円を狙う。今後は産地仲卸免許を取得してオンライン取引所のプラットフォームにしていく。ゆくゆくは水産市場関係者間の取り引きだけではなく、東京の飲食店が直接地方から仕入れできるようにするという。

みんチャレ:習慣化率8倍、三日坊主防止アプリ

三日坊主防止アプリの「みんチャレ」を提供するエーテンラボは、2017年にソニーの新規事業創出部「A10 Project」から独立した、2017年設立のスタートアップ企業だ。2006年の入社以来、ソニーで放送業務用機器の法人営業やプレステのネットワークサービス立ち上げに従事していた長坂剛氏はイントレプレナーからアントレプレナーになった起業家だ。エーテンラボは2017年2月に6600万円の資金調達を実施している。

人生の9割は習慣でできている。それは分かっていても、何か新しい取り組みを始めても三日坊主になるのが人間の性。長坂氏によれば、習慣の定着にはコーチングが最も効果があると言われてるそうだが、人間の介在が必要だとスケールしない。そこでアプリ上で匿名の5人がチームを作って同じゴールを目指して日々進捗を報告し合うのが「みんチャレ」というアプリだ。

チャレンジのテーマは、英語、ダイエット、投資、ゲーム、早起き、朝活(勉強)、運動(ウォーキング)などがある。1人の利用者が複数チームに参加することが多く、ユーザーごとの平均参加チーム数は3チーム。

チームチャットで証拠写真を送り合って、励まし合って習慣化する。ダイエットであれば、食べたものの写真、語学学習であれば覚えた単語の一覧の写真などだ。写真報告を見たほかのチームメンバーは「OK」ボタンを押す。次々と承認されると、コインが増えてやる気がでるし、報告したいがために「少しだけやろう」という気になる。早速ぼくも10年ほどくじけ続けている「中国語」でみんチャレを使い始めたのだけど、「せめて1ページだけでも読んで写真を撮ろう」という感じで無理なく続いている。自分が撮影した写真はカレンダー上に表示されるので、30日表示のカレンダーで「欠けているところ」がないように毎日やろうという心理が働くのも良い感じだ。今日誰がアクションを起こして誰がサボったかが「3/5」のようにチーム成績として表示されるのも、ほどよいプレッシャーになる。全員が達成した日には「全員達成ボーナス」が出たりもする。

みんチャレを使って21日間なにかを継続した場合の習慣化の成功率は69%にもなるのだとか。これはアプリやコーチの助けなしに自分1人で習慣化をやろうとした場合の8%に比べて約8倍だ。7日継続だけでも50%の人が、90日間の継続だと90%の人が習慣化に成功してその後もやり続けるようになるそうだ。

匿名でチームに入れるのがポイントで、長坂CEOは「人は必死な様子をLINEやFacebookで見せたくないもの。毎日楽しく続けられて、自己肯定感が向上する」と話す。

みんチャレはGoogle Playの2016のベストアプリに選ばれたことがあり、現在DAUは1万。アプリは無料だが、企業向けに「公式チャレンジ」を月額98万円で販売売していく。企業は継続してもらうことで売上増や顧客満足度を上げられるほか、インサイトの取得やユーザーとのチャットにる接点を持てることなどがメリット。この9月からは高校受験参考書で学研プラスとの取り組みを始めるという。

nacodo(なこうど):マッチングアプリに欠けているのはお節介

フィーリングを定量化して相性の良い異性との出会いをサポートするという「nacode(なこうど)」を2017年7月にリリースしたのは、株式会社いろものの山田陵氏だ。これまでマッチングアプリなどの課題は、プロフィールが盛りすぎになる傾向があって、そのことで「ちょっと雰囲気が違ったな」という失望から交際に発展しないケースがあることと、という。

「なかなかメッセージをもらえないとということで、実物より良いものを掲載しがち。これは日本でもアメリカでも同じ問題です。それで交際に発展しているかというと、そうなっていない」(山田CEO)

山田CEOが調べたデータによれば、日本では生涯未婚率があがっているものの「お見合いと職場結婚が減っている」だけ。実は自由恋愛による結婚の数は減っていない。つまり、「おせっかいをしてくれる(人)ところが減っている」というのが仮説だ。nacodeは「世話焼きエンジン」と呼ぶアルゴリズムで、ここをサポートするという。交際率をKPIとし、人力とボットでデートのサポートサービスを展開する。

マッチング系サービスは、米国では「サードウェーブ」と呼ばれる世代交代が起こりつつあって、いまの日本でも次世代のマッチングサービスが台頭するタイミングだと山田CEOは話している。

Matcher:大学に関係なくワンクリックでOB訪問ができるサービス

2015年にアドウェイズに入社するも2週間で退職して起業した西川晃平氏が取り組むのは、大学に関係なくワンクリックでOB訪問ができるサービス「Matcher」だ。これまでのOB訪問には大きく2つの問題があったという。「出身大学のOBしか訪問できないこと」「手続きが面倒なこと」(名簿が紙)だ。

現在Matcherは学生1万2000人が利用中。「毎年ユーザーが入れ替わるので集客が難しいと言われてるが、年率300%で伸ばし続けていて、総マッチング数は4万件となっている」(西川氏)という。登録社会人ユーザー数は5000人(2500社)で、スタートアップ企業はもちろん、大企業や経産省といったところも利用しているそうだ。これまでに新卒30人の採用実績がある。

学生ユーザーからみればOB訪問のサービスだが、企業側からみれば、社内外からの紹介による採用ツールとなる。今後は社内紹介、社外の外部エージェントによる紹介、スカウト(企業から学生に声がけする)の3つでビジネスモデルでマネタイズを進め、新卒市場だけでなく、中途採用市場にもサービスの幅を広げたい考えだ。

Matchapp:恋愛板のGameWith、マッチングアプリと攻略情報を提供

「傘(からかさ)」という、ちょっと変わった自分の名字からパラソルという社名のスタートアップを2017年に創業した傘勇一郎氏が作るのは、男女のマッチングアプリと恋愛攻略情報を提供するサイト「Matchapp」だ。これは「恋愛板のGameWith」のようなもので、近年登録者数が増えているマッチングアプリについて、第三者の立場から使い方や、攻略法といった情報提供を利用者に対して行う。

傘CEOが指摘するのは「情報格差が発生している」ということ。出会いを求めるユーザーは、そもそもどのアプリを使うべきも分からない状況だという。

すでにマッチングアプリ各社はオウンドメディアなどで情報提供も行っているが、あくまでも自社の宣伝。一方、Matchappは中立的な紹介とすることで「本家より上に来るようにSEOをやる」(傘CEO)という。各社サービスをクロールしてアプリごとのマッチ傾向について定量情報を提供。またリアルなユーザーによる体験情報も掲載し、マッチングアプリ各社への送客ビジネスを構築する。

メディア基盤を固めた後には、有料の恋愛Q&Aアプリと、マンツーマンの3カ月交際コミット制とする恋愛指導のオンラインサロンという2つの課金サービスを展開することを考えているそうだ。いま関係者の間では2017年の秋にはマッチングアプリのテレビCM解禁が噂されていて、傘CEOは「2003年のゲーム解禁と似ている」と話している。

盛り上がるARスポーツ、内視鏡+AIスタートアップなど:Incubate Camp 10th登壇企業紹介(前編)

国内の有力VCと起業家たちが集まる1泊2日のシードアクセラレーションプログラム「Incubate Camp 10th」が、8月25、26日の2日間にわたって千葉県のオークラアカデミーパークホテルで開催された。イベント概要については、こちらの概要レポート記事をご覧いただきたい。

ここでは18社中9社を紹介する。残り9社については後編記事「自動アートネイル機、アパレル法人向けフリマなど:Incubate Camp 10th登壇企業紹介(後編)」をみてほしい。

総合1位●HADO:AR活用で身体を動かす「テクノスポーツ」を開拓中

TechCrunch Japan読者なら、ARを使って「波動拳」を打ち出すような動画をすでに見たことがあるだろう。2014年創業のmeleapが提供する「HADO」は、スマホ挿入型のヘッドマウントディスプレイによるARを使い、目の前の現実世界の上に「エナジーボール」や「バリア」などのエフェクトを表示する体感型ゲームだ。モーションセンサーを腕に付け、腕を振って技を放ったりバリアを張ったりする。

meleap創業者の福田浩士氏のビジョンは明確だ。サッカー、野球、テニスとアナログスポーツが生まれた後、工業社会になって「モータースポーツ」が生まれた。そして、いま生まれつつあるのはIT技術を活かした「テクノスポーツ」だ。スポーツ市場は大きくて、例えば米国のアメフト「NFL」は1.4兆円規模、英国サッカー「プレミアリーグ」は5000億円。そして勃興中のe-sportsは1000億円規模になっている。

meleap創業者の福田浩士氏

 

AR/VRでは商業施設での体験型アトラクションの波が来ているが、meleapが作りつつあるのは、e-sportsが現実世界ににじみ出してきたような世界観かもしれない。HADOのプレイヤー数は40万人を突破し、常設店舗数も国内13店舗、海外30店舗の合計43店舗にまで広がっている。2017年11月期では売上1億円を突破していて、海外比率は6割にのぼっているという。

2016年11月には世界大会「HADO WORLD CUP 2016」も開催。第2回は12月3日を予定していて優勝賞金は300万円だという。今後はローカルで練習会や店舗別大会をやり、プロ・アマの大会開催によって店舗ビジネスを加速させ、常設施設でのプレイヤー数を増やすことで収益を上げていくといのが構想だ。HADO以外にもARによる球技系、陣取り系などゲームの種類も増やし、2020年までに5種競技一体型施設をプロデュースするのが目標。

いわゆる「やりこみ要素」のある戦略性の高い対人でのチーム競技としていくことで、サッカー同様に「消費されないコンテンツ、何度もリピートして100年愛されるものを作る」と福田CEOは話している。

総合2位●One Visa:ビザ申請のSaaSサービス

ペルー生まれで日本人とのハーフである岡村アルベルト氏が2015年に創業したResidenceは、ビザ申請・管理サービス「One Visa」を2017年6月から提供している。過去に友人が強制送還されるのを目の当たりにした体験から「世界から国境をなくす」ということをミッションとして、個人や法人向けに外国人労働者のビザ取得のSaaSサービスを展開している。

岡村CEOは品川の入国管理局で受付窓口現場責任者として年間2万件のビザに携わった経験がある。このため、どういう書類の作り方をすると申請が通りやすいか、といった深いノウハウまで持っているのが強みという。ビザの審査で大切なのは就労の場合であれば、会社規模、学歴、仕事内容、本人の経歴。これを「理由書」と言われる書類にまとめる。この理由書いかんで許可率が変わってくるそうだ。One Visaでは複数あるテンプレートのうち許可率が高くなるものを選べるという。

従来の手続きでは準備期間に1週間から1カ月、代理申請に10万円の費用がかかる。これをOne Visaは効率化。18種類必要な書類のうち、何が必要かを自動診断して雛形を作成。代理申請を4万円で行えるようにしている。1〜3日で申請ができて、入国管理局に出向いたときの平均4時間という待ち時間もなくなる。

法人導入の実績は68社で、大手コンビニなども導入を検討しているという。対象市場は成長していて、例えば昨年実績でビザ発給数は165万件で前年比6%で伸びているという。外国人を雇用している会社の数も17万3000社と前年比13%増となっている。より多くの日本企業が外国人を雇用しているということだ。2020年までにはビザ申請数は191万件とみていて、市場規模として2000億円規模になるという。

今後Residenceではビザ管理サービスを足がかりにして、アルバイト管理サービスや外国人居住者向けの与信情報提供サービス「One Trust」まで展開することを目指しているという。

総合3位●AIメディカルサービス:AIによる内視鏡画像診断で胃がんを発見

20年におよぶ内視鏡医師の経験と知識を生かすべく「AIメディカルサービス」の立ち上げ準備中なのは医療法人「ただともひろ胃腸科肛門科」を運営する多田智裕氏だ。医療画像をAIで診断というと、IBM Watsonの事例などが広く知られているが、内視鏡検査では日本に地の利があるのだという。

本格的な内視鏡はオリンパスによって1950年代に日本で開発され、いまもグローバルでの日本のシェアが大きい。少し古いが特許庁がまとめた2012年のデータだと、日米欧市場のすべてでオリンパスが約半分という高いシェアを取っている。医療画像データといっても、MRIやCTスキャン、X線写真などもある。これに対して内視鏡は直接臓器を中から見ているので情報量的に有利だそうだ。

内視鏡検査による画像データの蓄積と、診断経験をもつ専門医の数では日本がリードしている。「10年くらい、1万症例くらい見れば(早期の胃がんなどが)分かるようになります。でも、そういう話をするとアメリカでも中国でもクレイジーだと感嘆されるのです」(多田医師)という。

画像情報として有利とはいえ、診断が難しいことに変わりはない。たとえ医師であっても、専門医でなければ内視鏡画像を見ただけで早期がんを見つける「正解率」は31%程度にとどまるのだという。「たとえ内視鏡の専門医がやっても6〜7割程度。人工知能と専門医でダブルチェックとすることで見落としのない医療が実現できる」(多田医師)。

診断が難しいため、現在でも胃がん診断はダブルチェック体制を敷いているそうだが、人間の医師による診断に加えてAIの診断を組み合わせることで高い精度で診断が可能になるという。世界で初めてというピロリ菌胃炎の診断では、すでにディープラーニングで医師を超える診断精度がでているそうだ。「人間の医者を超える実績が出始めているので会社を立ち上げようと思った」(多田医師)。

すでに内視鏡画像を、その後の患者の病理データと結びつけるという地道な作業をすることで50万枚規模で有効なデータを収集済み。各地の医療機関と連携することで年間100万枚体制の確立を目指すという。

AIが医師を置き換えるのではないか。そんな疑問に対して多田医師は、そうではないという。見落としがないことが重要な検査であることから、ダブルチェックにAIを用いるのがポイントで、そのことで医師の検査負荷が減るという。精度があがれば、医療機関にとっては集客力アップにつながる。

胃がん検査で実用化ができれば、大腸がん、食道がん、潰瘍性大腸炎に対象を広げる。また、動画によるリアルタイム診断も可能といい、いずれそうした診断は全世界で必須の検査になるだろうという。医療大手と提携して世界に広めることで、年商300〜400億円を目指す。

DroneAgent:地方のラジコンショップもドローン専門店に

リクルートで「調整さんカレンダー」の立ち上げに携わったという峠下周平氏が立ち上げたドローンEC「DroneAgent」は、ドローン販売で課題となっていた実運用の情報不足やサポート不足を解決するサービス。建設・土木現場の測量目的での空撮やインフラ点検などで徐々に立ち上がりつつあるドローン市場は、2020年には1400億円市場に成長すると言われている。これに先立って、すでに「ドローンEC」という市場自体は150億円規模になっていると峠下CEOは指摘する。

DroneAgentの峠下周平氏

このドローンEC市場の課題は導入サポート能力。今のところドローンはラジコンショップや家電量販店が販売しているため、十分な情報提供ができていない。

そこでDroneAgentでは購入検討時のサポートをチャット、電話で行なったり、購入時の大型機のセッティングやメンテンスサービスを提供している。月間10万PVのドローン専門メディアで集客や啓蒙も行っている。例えば、栃木県にある販売店にノウハウを提供し、ラジコンショップだったものを月商100〜400万円のドローンショップに転身させた事例があるそうだ。ほかにも、映像制作会社からの「シネマカメラが搭載できるドローンがほしい」という問い合わせをサポートするなど500社以上の取引実績があるという。ドローン活用の法人需要では、ただ飛ばすのではなく、達成したい目的がある。だから、何ができて何ができないかといった相談が多いという。

現在DroneAgentのメンバーは9名。ドローン講師や元カメラマンなど平均31歳のチームで月商1000万円の黒字経営を達成していて、ドローン販売の商社を目指しているそうだ。

Co-LABO MAKER:実験機器のAirbnb

「研究大好き」という古谷優貴氏は根っからの研究者だ。東北大学や大手企業で、放射線検出用結晶材料とか、電力制御などに使われる「パワー半導体」の結晶の研究開発・事業立ち上げに携わってきた。そんな古谷氏が2017年4月に立ち上げたのが「実験機器のAirbnb」というCo-LABO MAKERだ。大学や企業で使われておらず遊休資産となっている高価な実験機器を、それを使いたい研究者とマッチングするプラットフォームだ。

例えば古谷CEO自身が院生時代に使っていた「フッ化物結晶成長装置」。もちろん古谷CEOが研究をしていたときには稼働率100%だったが、それが今や稼働率ゼロ。大学や企業にはそうした実験器具が多いのだという。その一方、研究したいネタがあるのに設備がないという研究者やベンチャー企業がある。実験器具は数百万円から数億円と高額であるのに対して個人や小さなチームが持つ研究費は100万円以下ということが多いからだ。

日本国内の研究開発費は18.9兆円規模にのぼり、外部委託研究費だけで3.2兆円あるという。そこにあるミスマッチにより、「価値のある人材や機器が生かされていない」(古谷CEO)というのがCo-LABO MAKERが解こうとしている社会課題だ。

「実験機器のAirbnb」とはいっても、Co-LABO MAKERはAirbnbとは大きく異る。というのも、Airbnbで扱うアイテムは「宿泊」という、ほかの出品アイテムと交換可能なコモディティーであるのに対して、実験機器というのは専門性が高いからだ。フッ化物結晶成長装置を必要としている人に、有機合成装置は無用なのだ。

現在Co-LABO MAKERはα版で、実験機器の登録を集めているところ。年内に3000台以上の登録を見込んでいるという。実験機器のシェアリングやマーケットプレイスの市場で先行するスタートアップ企業としては、「研究開発版のebay」と言われ、すでに約68億円の資金調達している「Science Exchange」があるが、国内は市場が未成熟なのだとか。Science Exchangeでは平均単価は30〜50万円、提供機関数は2500、手数料は3〜9%といったところだという。

効率化やお金を稼ぐことに関心の薄い大学や研究機関にとっては機会損失をなくすというのは大きなインセンティブになるかどうか分からない。ただ、実験器具を開放して門戸を開くことで人的な交流が生まれてオープンイノベーションが促進されるという面に期待する企業などは多いだろう、という。「企業が自社のリソースのみでイノベーションを起こすのは難しくなってきている」(古谷CEO)からだ。

Co-LABO MAKERはマッチングプラットフォームとして立ち上げてスケールさせ、その後には研究や、研究者に関するデータを蓄積していくことで、R&Dの総合プラットフォームを目指すという。

Comiru:学習塾の紙ベースの業務をデジタルで効率化

住友3M、オプトを経て2011年からは学習塾の共同経営者として塾運営に5年ほど関わってきたという栗原慎吾氏は2015年月にPOPER創業した。POPERは学習塾向けの経営支援プラットフォーム「Comiru」(コミル)を運営している。

栗原CEOは、学習塾の業務のうち授業が占めるのは3割にすぎないという。残り7割は保護者連絡、成績管理、授業準備といったことで、こうした業務が先生たちの負荷となっているという。例えば、生徒の指導報告は紙ベース。手書きで1000文字も書いていて、これだけで月間30時間の業務量になっている。

一方、学習塾の先生の80%はデジタルネイティブの大学生だ。保護者の80%もスマホを所有している。今こそ教室運営のSNSが求められている、というわけだ。栗原CEOがデモで見せたのは指導報告のWebフォームの入力画面。登録済みの教材をドロップダウンで選び、評価点を5つ星から付けるネット系サービスでは常識的なUIを使ってサクサクと入力できる。今のところ保護者コミュニケーションの業務課題に絞っていて、「業界経験者だから効率化ができる。保護者が納得しないとビジネスとして成立しない」と栗原CEOは話している。既存競合サービスに比べて、保護者向けアプリやクレジット決済の提供、講師同士の成功事例共有コミュニティーといった機能で差別化をしているという。

Comiruは2016年7月のローンチで、現在契約社数は80社、生徒アカウントは6500。10万件以上のコメントが生まれているという。ビジネスモデルとしては学習塾からIDあたり月額200円をチャージする。ただ、保護者の利用のスティッキネスは高く、MAUが98.6%、解約率が0%というのはサービスの特質を物語っている。業界最安値で競争優位を保ちつつ、API公開を進めてエンプラ向けの展開も視野に入れているという。

Comir運営のPOPER創業者 栗原慎吾氏

教育図鑑:「受験生や保護者」と「学校・塾」を圧倒的情報量でつなぐ

NTT本社企画部でロボット型検索エンジンgoo立ち上げた3人の1人という矢野一輝氏が2017年に入って本格運用を始めた「教育図鑑」は、旧態依然とした「学校・塾」の情報を網羅して整理したサービスだ。「教育は高額商品であり取替リスクも高い。それなのに購買決定のための十分な情報がない。慎重に、細かく見比べて選びたくないですか?」と矢野CEOは現状の課題を指摘する。

業界で定番となっている紙媒体だと学校名や住所を含めて27項目しか載っていないが、教育図鑑では各校共通の400項目の質問・回答でデータを構成。例えば、費用、進学実績、いじめ対応、ノート比較、父母・OBの評判、学校の雰囲気、在校生・先生に聞いた自校の好き・嫌い、入試問題分析などがあるという。項目ごとの比較ができるUIを用意しているのも特徴だそうだ。「こうしたコンテンツは読者、学校、塾からの評判が良い」(矢野CEO)

学校コンテンツはインタビュー記事も含むが、制作費は1校あたり3万円程度に抑えていて、すでに384校分のデータを用意する(取材済み40校)。掲載塾数は約8000教室、小学生会員は4万8000人となっているそうだ。

ビジネスモデルは学校・塾からのCMS利用料と資料請求報酬。例えば学校向けプランではCMS利用が40万円、資料請求1件あたり3000円といった料金。塾などは売上の7%程度を広告費に割いているが、このCMS利用料などは、塾がチラシを作って配布するときにカラーチラシを安いモノクロに切り替える程度で浮かせられる予算だという。

ネット上の競合にはイトクロの「塾ナビ」があるが、そうした最大手ですら年間3700億円あると見られる広告費や、2万5000校ある全国の塾全体の数%程度しか獲得できておらず、「ネットはまだこれから」(矢野CEO)という市場。まず首都圏の中学校からスタートし、高校・大学、専門学校へと縦に広げ、続いて近畿、政令指定都市と地理的な横展開を2018年夏以降に進めていくという。

教育図鑑は「実名」を基軸とした新世代だと説明する矢野一輝氏

 

ちなにみ、矢野CEOは「大学教授でありながら、前回起業時には(資金ショートで社員に給料を払えなくなったことから)コンビニでバイトすることにまでなった」というほどの辛酸をなめた経験がある「2度目」の起業家だ。1度目の起業では大型資金調達もしたが、結果は実らなかった。Incubate Campの会場には、1度目の起業で矢野氏に投資していたベンチャーキャピタリストも審査員として来場していた。その1度目の起業で矢野氏を支援したベンチャーキャピタリストから「前回の失敗から学んだことは?」という質問が投げられた。恐縮しきっていた矢野CEOが「あのときは大変なご迷惑をおかけしました」と述べ、手短に冷静な分析を訥々と語り終わると、会場からは温かい拍手が自然と沸き起こった。「失敗に寛容な文化」というのはお題目ではない。挑戦するべきことに挑戦して善戦したのであれば、また支援してくれる人たちがいるということだと思う。

GIFTED AGENT:発達障害者に特化したプログラミング教育

母がアスペルガー症候群の診断を受け、障害者だからという理由で才能を生かせない社会に問題意識を持ったという河崎純真氏が創業した「GIFTED AGENT」は、発達障害者に特化したプログラミング・デザイン教育を行う教育・人材事業の会社だ。

渋谷で開校したGIFTED AGENTの利用者は現在40人。未踏エンジニアなど3名が講師を務めていて、すでにセキュリティーやVR、データサイエンスといった専門性の高い領域でエンジニア4人を輩出したという。ビジネスモデルは福祉施設として国から助成金を受けることと、就職時に企業から受け取る紹介料。現在、月間売上400万円で単月黒字を達成している。

今後は渋谷に加えて東大前や早稲田にも拠点を作り、生徒数100名を目指す。対象となる発達障害の若年層は日本全国に約100万人いると言われている。2013年に改正された「障害者雇用促進法」(障害者の雇用の促進等に関する法律)において、身体の障害に加えて「発達障害」が明記されたことを受けて、事業として追い風も吹いているという。

そういう教育事業を運営しながらも、現在25歳の河崎CEOが実現したいのは、能力に偏りがあって社会適応がうまくいかない人たちでも生きやすく、適切な富の配分が行われる社会を作ることだという。現在の資本主義とそれに根ざした国家や金融システムは、資本家と、その奴隷という分離を生んでいて、そうした社会システムを新しいモノで書き換えたいという。

既存社会システムを変革するのはきわめて困難なので、それとは別に新しく国家や経済システムが回る仕組み作る。そのためにコミュニティーのための暗号通貨の交換所と、国家を作るための枠組みとして「Comons OS」というプロジェクトに取り組む。国家というのは今は地理的境界線を輪郭として言語や軍隊、文化、法や通貨を共有しているが、その一方で華僑ネットワークのように何かのアイデンティティーを共有したコミュニティーというのもある。近い将来、物理的制約と離れて、いまの10倍とか100倍程度の数の国家が生まれるのではないかと、と河崎CEOは話す。彼は試みとして南富良野で新しい社会を作るという実験をやり、70人の小さな経済圏を独自通貨を使ってみたりしたそうだ。ブロックチェーンによって税金や条例、住民の管理ができるという。

Common OSについて説明する河崎純真氏

 

残り9社については、こちら:自動アートネイル機、アパレル法人向けフリマなど:Incubate Camp 10th登壇企業紹介(後編)

起業家・VCによる千葉での合宿「Incubate Camp 10th」登壇企業18社をご紹介

国内の有力VCと起業家たちが集まる1泊2日のシードアクセラレーションプログラム「Incubate Camp 10th」が、8月25、26日の2日間にわたって千葉県のオークラアカデミーパークホテルで開催された。Incubate Campは2010年から始まったイベントで、今回が10回目だ(初期には年2回開催)。日本のシードアクセラレーターの中では草分け的存在の1つだ。これまでにラクスルやGameWith、airCloset、シナプスなどを輩出している。

参加したのは18人のベンチャーキャピタリストと、18人の起業家、それにVCや経営者、スタートアップ支援関係者ら10人の審査員だ。

集まった審査員やベンチャーキャピタリストたち

イベントを主催しているのは独立系VCのインキュベイトファンドだが、参加ベンチャーキャピタリスト18人のうち14人はグロービス・キャピタル・パートナーズ、インフィニティ・ベンチャーズ、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、ANRI、YJキャピタルなど外部の「ゲストベンチャーキャピタリスト」。Incubate Campは、国内で有力なスタートアップ・VC業界の主要な顔ぶれが集まる招待制イベントの1つとなっている。

今回で10回目となったIncubate Camp 10thでは250人以上の起業家から申し込みがあり、この中から18人が選出されて参加。初日午前にベンチャーキャピタリストたちに向かってピッチを行い、その後は、こちらの記事にあるように起業家とベンチャーキャピタリストが1対1でペアを組んで事業プランやピッチをブラッシュアップ。2日目には審査員たちの前で、説得力と事業フォーカスを研ぎ澄ませたピッチを行った。

18人のベンチャーキャピタリストと18人の起業家は半日かけた「総当り」で、事業計画やブロダクトについて話し合った

シード資金ではなく、シリーズA調達の場に

Incubate Campのポイントは、駆け出したばかりのシード期の起業家に対してベンチャーキャピタリストらが資金のみならず事業のアドバイスを積極的に与えて議論するというところにある。ただ、18社のピッチを見終わったときに少なからぬベンチャーキャピタリストたちが苦笑いとともに、こぼしていた感想は「足りないものは資金ですか? という感じですよね」というものだった。

すでに事業シーズとして十分に投資検討に値するスタートアップが多く、半日程度の短時間のハンズオンでは付加価値を出しづらいという意味だ。あるベンチャーキャピタリストは18社のうちほとんどが採点結果が5点満点中4点だったとも言っていた。5点は「投資しても良い」で、4点は「問題点は残っているが克服可能。議論を通して投資を検討したい」という採点基準。

かつては数百万円のシード資金獲得を目指すのがIncubate Campという場だった。それが今はエンジェル投資家やアクセラレーターの増加などシードマネーが増えた結果、MVPを作ってトラクションも出始めたサービスの起業家がシリーズA調達を求めて参加する場になっているようにみえる。実際、昨年の第9回参加スタートアップ企業のその後をみると、17社中12社が資金調達を実施して、その総額は約7.2億円となっているという。

Incubate Campスタート時の2010年と今とでは資金調達環境の違いがある。だから単純な比較はできない。それでも、ここ数年での日本のスタートアップのレベル向上には著しいものがあるとは言えるだろう。

ベンチャーキャピタリストに向かってプレゼンする起業家

植物工場や、がん早期検知のスタートアップまで

参加する起業家の多様性も増している。

例えば植物工場のIoTスタートアップだとか、現役医師たちによる「内視鏡検査+AI」、アパレル業界のベテランによるファブリックのB2Bマーケットプレイスのスタートアップというように、各業界のベテランや専門家が起業しているケースが増えている。

これまで主にネット上で完結していたソフトウェアやネットワークによるイノベーションだが、その波がいよいよ現実社会の深いところへ波及する段階となってきている。あるベンチャーキャピタリストは、「インターネットを持ってきてマーケットプレイスを作るだけで大きな利益を生み出す業界というのは、まだまだあるということを思い出した」とコメントしていた。

さて、イベント全体のレポートはここまでにして、さっそくIncubate Camp 10thに参加した18社を一挙に紹介しよう。総合順位とベストグロース賞の順位は以下の通り。

【総合順位】 1位 HADO(meleap):AR活用で身体を動かす「テクノスポーツ」 2位 One Visa(Residence):ビザ申請・管理のSaaSサービス 3位 AIメディカルサービス:AIによる内視鏡画像診断で胃がんを発見

【ベストグロース賞】 1位 AIメディカルサービス:AIによる内視鏡画像診断で胃がんを発見 2位 DroneAgent:ドローン販売サービス 2位 Co-LABO MAKER:実験機器のAirbnb ※「ベストグロース賞」とは起業家が持ってきた事業プランや初日のピッチに対して、ペアを汲んだベンチャーキャピタリストが助言をした結果として、2日目の最終ピッチで「差分」が大きかったチームに送られる賞だ。

優勝したmeleapの福田浩士氏と握手をして投資を約束するインキュベイトファンドの和田圭祐氏

 

すでに記事がだいぶ長くなっているので、18のスタートアップ企業については、別記事2本に分けて掲載する。

盛り上がるARスポーツ、内視鏡+AIスタートアップなど:Incubate Camp 10th登壇企業紹介(前編)

自動アートネイル機、アパレル法人向けフリマなど:Incubate Camp 10th登壇企業紹介(後編)