8月10日に東証マザーズ市場への上場承認が下りたばかりのウォンテッドリー。同社のIPOの内容についてはネット上では賛否両論あるようだが、そんなウォンテッドリーのIPOを分析したブログエントリーがGoogleの検索結果から消え、そのブログエントリーのURLをシェアしたツイートまでもが消えるという事態が起こった。一体どういうことか。

ブログがGoogleの検索結果から消えた

きっかけになったのは「Wantedly(ウォンテッドリー)のIPOがいろいろ凄いので考察」というブログエントリー。バリュエーションやストックオプションの設計など、同社のIPOの内容を分析した上で、「ゴールを成し遂げられたのは素晴らしい」と評価しつつ、「これではココロオドラない(編集部注:ウォンテッドリーは「シゴトでココロオドルひとをふやす」をミッションにしている)」「やりがい搾取感が否めない」といった文言で批判して注目を集めていた。

だがそのブログエントリーが8月25日になってGoogleの検索結果から削除され、さらにそのブログエントリーのURLをシェアしていたTwitterの投稿の多くが非表示となった。ウォンテッドリーは当該のブログエントリー内に同社代表取締役社長の仲暁子氏の写真が掲載されていたため、米国のデジタルミレニアム著作権法(DMCA:Digital Millennium Copyright Act)に基づいて著作権侵害のコンテンツとして当該ブログをGoogle、Twitterに申請していたからだ。

これに対してネット上では「言論を封じるために、DMCAに基づいた削除を行ったのではないか」という声が上がった。以前、「同様の手段を用いて自社の悪評を消したのではないか」と激しく批判された別の会社もあった。上場が決まり社会の公器たるべき企業として果たして正しい対応だったのか、と問う声が大きい。

ウォンテッドリーはTechCrunchの取材に対して、「一部ブログ記事で利用されていた画像に関しまして、引用に当たるかどうかは様々な解釈がある上で、有識者に意見をいただきながら、社内で協議した結果、弊社に関する画像を無断で引用されているとの判断に至りました。昨日(8月24日)、弊社からGoogle、Twitterに削除申請を行い、現在に至っている次第です。多くの皆さまに、ご迷惑とご不安をおかけしてしまったことを深くお詫び申し上げます」とコメント。TwitterでのURLのシェアについても、「リンクが問題ではなく、OGイメージ(OGPで表示される画像)が著作権侵害だった」としている。

一方で、著作権保護の観点以外に削除の意図はなかったのかという質問に対して、「他に意図はありません」と答えた。加えてウォンテッドリーでは8月25日午後、自社サイト上に「当社が行った著作権侵害による削除申請につきまして」と題した声明も発表している。

執筆者への事前連絡はなし

当該ブログを書いたINST代表取締役の石野幸助氏にも話を聞いた。石野氏は「まさか自分のブログがGoogleから削除されると思わなかった」と話した上で、今回の同社の対応について「(言論を封じるなどとは)特には何も思いませんでした。デリケートな時期なので対応に追われていたのかな、と」コメント。石野氏は以前にもウォンテッドリーに関するブログエントリーを書いており、その際にはウォンテッドリーからタイトル変更などの依頼があったそうだが、今回同社からの連絡はなかったという。

ただし問題となっている画像については「Twitterから『著作権侵害だよ』と言われていたので削除しました。Google検索で1位に出てきたものを使い、著作権のことは意識はしておりませんでした。著作権侵害と言われれば、その罰は受けないといけない」(石野氏)とのことだった。エントリーが攻撃的ではないかという意見もあるが、「全く恨みもありませんし、ただ単にIPOに対しての感想を書いたまで、という認識です」と説明した。

求められるのは健全な議論

当事者間の対話を含めて、この騒動の解決方法は他にあったと思う。騒動に関する対応を除いて言えば、ソーシャル時代の新しい人材サービスが黒字で上場することの意味は大きいとも思う。

この騒動についてはすでに各所で報じられ、ソーシャルメディアやブログでもさまざまな意見が挙がっているが、最後にマイナースタジオ代表取締役CEOの石田健氏がニュース解説サイト「The HEADLINE」に書いた内容を紹介したい。石田氏はイグジット経験のある起業家であり、過去にはメディア研究の個人ブログなども執筆していた。起業家とメディア、両側から騒動を分析した内容だと思ったからだ。

石田氏は、仲氏自身がWantedlyのプロフィールページで画像の無断利用をしているのではないかと指摘(編集注:現在は差し替えられている)。一方で、既存の画像を使って新たなコンテンツを生み出すこと自体はインターネットが生み出したミームの1つであるため、「さまざまな問題を個別具体的に考えていく必要がある」と語る。そういえば、今回問題になった画像は、TechCrunchもウォンテッドリーから提供を受けて使用している画像だった。

石田氏のエントリーは次のように締めくくられている。「今回ウォンテッドリー社がおこなったように、著作権やDMCAという仕組みを恣意的に解釈して、自社に都合の良い様に利用することは決して望ましいものではありません。未だ未整備で、議論の余地があるインターネットの著作権だからこそ健全な議論が求められますし、仕組みの悪用は決して認められるものではないでしょう」

photo by stanze