オフィスデザイン

アメリカ企業はなぜ今オフィスを移すのか?

今アメリカ企業にオフィス移転の動きが次々と見られている。これは完成間近とされるサンフランシスコのセールスフォース本社や、クパチーノにあるアップルパークだけに留まらず、General ElectricやMarriott Internationalといった歴史ある企業にも共通している。彼らは社員のコラボレーションやイノベーションという要素以外にも目的としているものがあるようだ。 今回は事例とともに、アメリカの企業がオフィスを移転する3つの理由を紹介する。

1. 人材発掘のためのロケーション

日本ではオフィスをアクセスの良い駅に構える、駅近に置く、また大通り沿いに構える等、通勤や営業活動のしやすさが考慮される傾向にある。しかし、国土の広いアメリカにおいてロケーションに求めるものは別にある。それは人材の発掘である。 アメリカでは現在多くの企業が都市部に集中する傾向が高まっている。その背景について、ブルッキングス研究所と都市社会学の専門家であるリチャード・フロリダの分析によると、学生の卒業後の動きと関係があるようだ。 そのレポートによると、ニューヨークでは学生の74.2%が卒業後もニューヨーク市周辺に留まるとのこと。その他にもシアトル、デトロイト、ヒューストン、アトランタ、ダラス、ポートランドやシカゴと優秀な大学が集まる都市で、卒業生の70%以上がその地域周辺に残ることがデータで示されている(※1)。この結果から、若くて優秀な社員を獲得するにはこのような都市にオフィスを置くことが重要のようだ。 リチャード・フロリダが所長を務めるトロント大学ロットマン経営大学院マーチン・プロスペリティ研究所の資料 実際に人材獲得のためにオフィスを都市部に移すと公言する企業は増えている。1922年よりネブラスカ州オマハでビシネスを展開してきた大手食品メーカー、ConAgra Brandsは昨年7月に本社をイリノイ州シカゴに移転。「ブランドの立て直しと新しいアイディアの発案を行うために必要な人材の獲得に向け、最良の一手を打った」と同社CEOのショーン・コノリーは語る。 「より優秀な人材を獲得するために、若い従業員に魅力的に映るロケーションは必要だった」と語るのはMarriott InternationalのCEO、アルネ・ソレンソン。60年以上にわたりアメリカ・メリーランド州のモントゴメリー・カウンティに拠点を置いていたが、2022年の賃貸借契約終了に合わせ、新本社を現在の本社からおよそ7km離れた、ベセスダのダウンタウンに移すことを決定した。 他にも世界最大級の複合企業であるGeneral Electricは、コネチカット州フェアフィールドの本社をマサチューセッツ州ボストンに移動。ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、ボストン大学、ウィートン大学をはじめとした、世界的に名高い名門校が集まる場所に本社を構えることで、優秀な頭脳を持つ人材の獲得を狙う。新オフィスの完成は2019年夏頃に予定されているが、社員の移動は昨年から徐々に始まっている。 General Electric本社の完成予想図(写真はBLDUPより引用) このように、大企業が必要な人材の獲得のために本社を移すことはもう珍しいことではない。リロケーションを通して、次世代のビジネスの支えとなる人材が眠るロケーションを常に探しているのである。

2. 企業のニーズに対応するビルオーナーの柔軟性

上で挙げたGeneral Electricsをはじめ、Apple、Facebook、Google、Linkedin、SalesForce、American Airlinesといった企業は新しく本社オフィスを建て直し、多くの注目を集めている。しかし、これらの企業の躍進は本社以外の社員の働きもあってのことである。実際にここに挙げた企業の社員の50%以上は本社オフィスとは別の地域で働いている。 完成間近のSalesforce Tower(左)とApple Park(右) このように本社以外でも様々な都市に支社オフィスを構えて人材獲得をするケースにおいては、大企業であってもまずは規模の小さいチームからスタートすることがほとんどだ。このような状況において、わざわざオフィスを建てるよりもコワーキングスペースはスムーズな支社開設になりやすい。実際、コワーキングスペースを利用する大企業の数は増えている。 CBREのレポート(※2)によると、アメリカ国内で44%と半数近い企業がすでにコワーキングサービスを利用、2020年までには65%まで上るという推測されており、企業の積極的な姿勢が窺える。今まではスタートアップやフリーランサーのためのワークプレイスという印象が強かったが、大企業にもコワーキングスペースの需要は増えているのだ。 このようなフレキシブルスペースは支社開設以外にも企業ごとにユニークな使い方が見られる。Microsoftは今年ニューヨークオフィスにいる社員の30%、同オフィス営業チームの70%となるおよそ300人にWeWorkへのアクセスを提供。社員の自由な働き方を推進しながら、同時にスタートアップカルチャーを学んでもらうことが彼らの狙いだ。 ニューヨーク・ソーホー地区にあるWeWork Soho 一方IBMは、メンターシップや教育プログラムの提供で有名なコワーキングスペース、Galvanizeと提携。IBMのクラウドプラットフォーム、Bluemixを使って一般向けにIBMが持つアジャイル開発、リーンスタートアップやプログラミングメソッドを提供する環境を開設した。歴史的に多くのテック企業がガレージで生まれたことから、「Bluemix Garage」と名付けている。 他にGoogleやAmazonはそれぞれ自社で専用コワーキングスペースを複数開設し、自社のプラットフォームを利用する顧客との繋がりをさらに強くする取り組みを行っている。 カリフォルニア州サンフランシスコにあるAWS Pop-Up Loft このようなコワーキングスペースの需要の高さが、これまでのオフィスビルオーナーとテナントである企業の関係性も変えつつある。これまでの賃貸借契約は5年から10年の単位で更新され、一度契約されたスペースにオーナーが積極的に関わるようなことはなかった。しかし今ではコワーキングサービスに対抗する形で、共有ミーティングスペースの提供やフロントデスクスタッフ、ITサポートなどサービスを充実させ、ホスピタリティを重視した役割をオーナーが担うようになっている。 今年初めにはニューヨークにある不動産会社、Tishman Speyer社がテナントのために仕事とプレイベートの時間の充実をサポートするサービス、Zoを導入。オフィスビル内での託児所や健康診断・医療サービスから、健康維持のためのヨガやフィットネス教室、健康な食事のケータリング、ファッションやネイルサロン紹介、旅行計画代行サービスまで含む、働く人のためのライフスタイル・サポートサービスの提供を始めた。 自社オフィスでなくても、企業はこのような高度なサービスをいつでも受けられる環境が手に入るである。ビルオーナーたちの競争は激化しそうだ。 今後多くの企業はオフィススペースの立地や面積の広さだけでなく、このような提供サービスも見比べながらコワーキングスペースかオフィスビルにテナントとして入ることを選ぶことになる。アメリカにある企業は、自社のニーズに合わせて柔軟にオフィススペースを選んでいるようだ。

3. 環境を意識した地域貢献型のオフィス

日本でも環境を意識したオフィス作りを行ったりオフィスビルに入居したりすることで、地域に貢献する企業は多く存在するが、アメリカではオフィスを建てる時にそれが最重要項目の1つになる。環境と人に優しいオフィスを作ることで企業のイメージアップに繋げる前に、まず社会的に認められることを目的にしているのだ。 環境に優しい建物の指標であるLEEDや、利用者にいかに健康的な建物であるかという基準のWELLがある。これから建つオフィスは積極的にこういった指標をクリアすることを目指し、またビルにテナントとして入る場合でも内装工事を施し、環境に優しいオフィスにする努力を行っている。 またアメリカの中でもカリフォルニア州は環境保護に対し特に積極的な姿勢を見せている。California Green Building Standard Code、通称「Cal Green」と呼ばれる規定を建築基準法に取り入れ、州全体を挙げて環境保全を推し進めている。企業が新しくオフィスを建てる時にはこの法に従う必要があることから、この基準をクリアしやすい場所・地域に建てる、もしくは建物を選ぶことがコストを抑える面で重要になる。 環境や人に配慮することは企業としての社会に対する努力の姿勢でもあり、また義務でもある。そのようなオフィスを探す、もしくは建てるというのは企業にとって自社の価値を表す重要なポイントなのだ。

まとめ

オフィス選びはどの企業にとっても大きな決断の1つであるが、それは国によって大きく特徴が異なることがわかる。上で挙げたものの中には日本でも活用されそうなものもあるだろう。企業が次のオフィスを決める時には、オフィスに求める役割をしっかりと熟考しながらも上記を参考にしてみてはいかがだろうか。 参考記事: ※1 Richard Florida: The U.S. Cities Winning the Battle Against Brain Drain ※2 CBRE Research: Global Occupier Survey 2017 Trade & Industry Development: Why Corporate Headquarters Relocate *本記事はフロンティアコンサルティング様のブログ、Worker’s Resortより転載いたしました。

UNIQLOも導入!日本の働き方を変えるアメリカ西海岸のオフィスデザイン

今年2月、有明に新オフィスを建てたユニクロブランドのファーストリテイリング。8月にはニューオフィス推進賞の中でも最高の経済産業大臣賞を受賞し、そのデザイン性と実用性の高さはさらに多くの注目を集めている。会社としての労働環境整備だけでなく、日本のワークカルチャーを変えたいという柳井正社長の願いは着実に形となっている。 このオフィスをデザインしたのは、アメリカ・オレゴン州ポートランドに拠点を置くAllied Works Architecture。これまでシアトル美術館、カナダ国立ミュージックセンター、イギリスのホロコースト博物館等の文化的建造物からアメリカのプロサッカーチーム・ポートランドティンバーズのホームスタジアムまで世界中で数多くのプロジェクトを担当している。 同社のプリンシパル、ブラッド・クロエフィル曰く、上で挙げた柳井社長の「日本の労働文化の変革」という超巨大テーマをこの1プロジェクトでどれだけ実現できるかが最大の課題だったという。 関連記事:オフィスデザインの軸となる“企業文化への理解”とは 今回は彼らがアメリカ西海岸をイメージして建てたこのオフィスに注目。柳井社長とクロエフィルがサンフランシスコ・ベイエリアのオフィスデザインと文化を日本に導入する上で気を付けた3つのポイントを紹介する。 上記写真は、Allied Works Architectureのウェブサイトより引用

1. 「街1つすべてが働く場所」だという認識の導入

2013年にプロジェクトが開始された直後から、シリコンバレー風のオフィスをただ日本に持ってくることだけはしたくなかったというクロエフィル率いるチームは、ユニクロ社員の働き方を考える上で彼らの「自由」に焦点を絞った。 彼曰く、欧米企業の社員に1つ言えることは、彼らがオフィス内や外、家、カフェ、そしてバーでも仕事をしたがるということ。そこで「街全体がワークプレイス」だという基本的概念と、働く場所を選択する自由をユニクロ社員に教え伝えることに注目した。 実際に新オフィスの名である「UNIQLO CITY TOKYO」はそれから由来している。今まで主に通常のデスクと、ガラスの壁に覆われたミーティングルームの2種類しかスペースのなかったオフィスから、カフェやソーシャルスペース、図書室、ギャラリーの他に約1000人収容可能の巨大ホールも完備して計30近くに及ぶスペースを用意。 「玄関」や「ご近所」など、クロエフィルが日本家屋をイメージしてデザインしたというオフィスは社員により多くの働き方を提供している。人の動きを促進して、社員同士のコラボレーションを活発にする環境が日本社員のために設計されているのだ。 写真はAllied Works Architectureのウェブサイトより引用 写真はdexignerより引用 社員にアットホームな雰囲気を感じて欲しかったという柳井社長はラウンジチェアやソファ、木製テーブルなど、自然の中にある住宅をイメージしてオフィス家具を導入。シリコンバレーらしい「仕事とプライベートが一体となった生活」感をこの有明新オフィスとリンクさせた。自分の住む街のどこでも仕事ができるという雰囲気づくりをまずオフィスで表現したかったのである。

2. 「13日間で商品リリース」のスピードをオフィスで実現

「顧客のニーズに合わせた商品を素早く店頭に並べたい」というスピード感を重視し、Zaraで有名なインディテックス・グループ打倒を掲げる柳井社長。そのための手段の1つとして「速さ」を重視し、商品企画からデリバリーまでのスピードを2週間で行うことを目標にしている。 有明新オフィスでそれを実現するため、デザイン部門やマーケティング部門、物流倉庫を集約。物理的に1つのオフィスに複数部門から社員を集めることで商品供給までの一連の流れをよりスムーズに行えるようにした。 また5000坪という広々としたスペースを確保した点にも注目する必要がある。六本木のミッドタウン・タワーにあるオフィスでは社員を複数階に分けていたのに比べ、この有明オフィスは縦ではなく横に広がるスペースで様々な部門の社員が顔を合わせやすいようになっている。結果的に社員がチームとしてまとまりやすく、仕事の効率を上げる環境が整えられているのである。 写真はAllied Works Architectureのウェブサイトより引用

3. 初日から使われるオフィスの準備

アメリカ西海岸の働き方をイメージして設計したオフィスだからこそ、そのデザインの美しさに関しては自信があったとクロエフィルは語る。一方、それが「日本で実際に機能するのか」という部分は非常に不安だったようだ。 結局オフィスは社員あってのスペースであり、彼らにしっかりと使われるという「機能性」を十分に満たしたものでなければならない。実際にファーストリテイリング社内では複数回の研修を通して、管理職の社員と共に新オフィスのデザインの目的とゴールの共有、また社員自身は好きな方法や場所で仕事して良いという「自由」があるという共通認識の確認を行った。 新オフィスに社員が入る初日、クロエフィルはオフィスで彼らの反応を自らの目で確かめるべくその場に居たのだが、社員が早速オフィスの様々なスペースを気兼ねなく使う光景を見て不安が一瞬で飛び去ったという。新しいデザインの提供と同時に社員への教育も徹底し、新しいワークスタイルの導入をスムーズに行ったのである。 写真はMONOCLEより引用

最後に

働き方改革の1つとしてオフィス改善を目標に、アメリカ西海岸のデザインが日本でも少しずつ見られるようになったが、日本への導入は着々と成功しているように感じる。アメリカでこれまで解決されてきたオフィスの問題点は意外と日本のオフィスのものと近いところがあるのかもしれない。 現にクロエフィルはユニクロの六本木オフィスを見た際、低い天井の下、個人のデスクだけに留まって働く社員を見て、アメリカでまだ多くの企業が抱えている問題と非常に似ていたと語っている。柳井社長の打倒Zaraという目標のように世界で戦う企業は日本に多く存在する。そういった企業にこそ、まずは世界で戦えるオフィスを作ることは重要なのかもしれない。 *本記事はフロンティアコンサルティング様のブログ、Worker’s Resortより転載いたしました。

スタートアップは残業をしまくるのか?ーサンフランシスコ・ベイエリアのワーク・ライフ・バランス事情

最新テクノロジーの導入により仕事の効率化は進む一方、いつでも仕事に取り組める環境は社員に対して常にストレスを与えることに繋がりかねない。そういったテクノロジーが生活に浸透しているサンフランシスコ・ベイエリアだが、仕事とプライベートのバランスに対してはどう考えられているのか。 今回、ここでのワーク・ライフ・バランスに対する考え方を起業者・経営者側と社員側から掘り下げてみたところ、充実した生活を送るには「テクノロジーと離れて自分の時間を持つ」ことが鍵になりそうだと見えてきた。

仕事とプライベートの一体化は今も進む

西海岸を中心にリモートワークや自由な就労時間というのが認められている職場は多い。反面、仕事とプライベートを切り離すのは難しくなっているのも事実である。「仕事とプライベートに優先順位をつけるべきではなく、2つとも充実させるべき」というワーク・ライフ・インテグレーションという考え方は、テクノロジーが日常生活にある今では社員にも一般的になっている。 今年7月に一時的ながらビル・ゲイツの総資産を抜いたAmazonのCEO、ジェフ・ベゾスも仕事とプライベートの調和について語る1人。先日のForbesの記事にて「ワーク・ライフ・ハーモニー」という言葉を用い、「いつも終業時刻ばかりを気にしているような惨めな社員ばかりだったら、今の会社の雰囲気は醸成されなかった」と語っている。 プライベートと仕事を一緒に生活の中に取り入れ、半ば仕事を生きがいにする、経営者・起業家スタイルの生き方は一般社員にも求められていくようだ。ではベイエリアの起業家の生活における仕事とは一体どういったものだろうか。 関連記事:効率を上げるシリコンバレー流ワーキングカルチャーとは?【対談】

起業家ライフに激務はつきもの?

ベイエリアの起業家の間には、そのビジネス成功秘話の影に、長時間労働が当然であるという考え方が浸透しているようだ。彼らがワーク・ライフ・バランスを追い求めることは理想的でありつつもやはり現実的には無理なのか。こういった議論は今も激しく行われている。 実際に今年5月、ベンチャーキャピタリストであるブレイク・ロビンスは「より大事なのはどれだけ長く働いたかではなく、どれだけスマートに仕事をこなすか」という旨をツイート。それに対し、Paypal創業当初の幹部でsquareの元COOの経験を持ち、現在は投資家のキース・ラボイスは「まったく違う」と返信。PayPalやFacebookの起業当時の話やプロアメフトチーム、ペイトリオッツのビル・ベリチック監督の1日20時間近くに及ぶ努力を引き合いに出し、「他にもいる才能ある人に対し、ただスマートさで勝てると思い込むのは傲慢だ」と付け加え、物議を醸した。

I promise you...your competition isn't beating you because they are working more hours than you. It's because they are working smarter.

— Blake Robbins (@blakeir) May 30, 2017 プロジェクト管理ツール「Basecamp」を開発したことで知られるプログラマーのディビッド・ハイネマイヤー・ハンソンも数日後に「これはラボイス氏だけでなく、VC達の間では広く共有されている信念である」とツイートしている。 現にスタートアップ起業家の逸話は数多く存在する。TeslaやSpaceXの創業者、イーロン・マスクは、自身のスタートアップ立ち上げ時にデスクの隣にビーンバッグを置き、テスラ製造ラインの近くには寝袋を置いていたという。また、TwitterやSquareのファウンダーであるジャック・ドーシーは10年前の自分にかけるアドバイスとして「運動や健康にもっと気を使った生活をすること」だと語るほど、創業時は仕事に没頭していたようだ。 ラボイスは後日WIREDの記事に「若い人たちに『一生懸命働かなくてもよい』とキャリアアドバイスを与えるのは誤りのように感じる」と答えている。彼にとって、「一生懸命働く=時間を気にせずに働く」ということのようだ。成功するために差し出す「何か」はもちろんあって当然だろうが、多くの起業家にとってそれは「労働時間」なのだろう。 関連記事: ・シリコンバレーのVCの仕事【インタビュー①】Draper Nexus 北村充崇世界を変えているのは頭の良い不良たちだ

「努力してこそ功を成す」考え方が根底にある

またプロテスタントのスタートアップ起業家たちにとって、激務は宗教的観点から宿命であるという考え方がある。ドイツ人社会学者のマックス・ウェーバーも自身の1920年の著書にて「プロテスタント・ワーク・エシック」と呼ばれる考え方に言及している。 要は資本主義の社会において懸命に働くことは信心深さの表れとともに宗教的義務であり、一生懸命なほどより信心深いクリスチャンという証で救われる可能性も高くなる、というのである。そういう意味で、長時間労働は「懸命に働く」ことの明確な表れなのだ。 できるだけ生産性の高い仕事ができるよう、オフィスデザインや柔軟な働き方制度の導入を通じて働く環境が整えられつつあるが、長時間労働という犠牲は今後もある程度社員に求められていきそうだ。 雇用者側に立つ起業家がこのような立場の中、果たして社員は起業家と同じ情熱を持って、仕事を半ば生きがいにして時間を気にせず働けるものなのだろうか。社員の仕事とプライベートのバランスに関する考え方について、Googleで行われた研究がある。 マックス・ウェーバー(左)と敬虔なクリスチャン夫婦を描いた絵として有名な作品「アメリカン・ゴシック」(右)

Google社内のワーク・ライフ・バランス研究、gDNA

このように働き方に対する見解が様々ある中、シリコンバレーにあるGoogle本社も「社員の仕事に対する経験」について知るべく、ワーク・ライフ・バランス研究「gDNAプロジェクト」を社内で始動。同社のPeople Operations部署にいるラスロー・ボックを筆頭に、博士号を持つ社員が研究員として4000人のGoogle社員を対象に長期研究を始めた。 ボック率いるチームは最初の数年で社員のワーク・ライフ・バランスに対する考え方に特徴があることを発見。それが次の2つであった。

セグメンテーター:仕事とプライベートをしっかり分けており、家にいるときはメールを確認しないという社員。研究対象となった社員のうち、31%がこのセグメンテーターであった。

インテグレーター:仕事とプライベートの境界線が曖昧で、常にメールを確認してしまう社員。残りの69%の社員がこのインテグレーターに当てはまる。

興味深いのは、この69%のインテグレーターのうち半数以上が仕事とプライベートをもっと分けたいと答えているということだ。仕事がいつどこでできるようになった今でも、やはり仕事に絶対にかかわらない時間の確保は多くの社員に必要なようである。 この結果を見たGoogleは、ダブリンオフィスで「Dublin Goes Dark」というプログラムを実施。社員が仕事を終えて家路につく前に、仕事に使うデバイスをオフィスのフロントデスクに置いていき、仕事から離れる生活を推奨したのである。 Googleのダブリンオフィス(写真はOffice Snapshotsより) この施策の後、多くの社員がストレスの少ない、楽しい仕事後の時間を過ごしているという報告があったとボックは語る。就労時間外のメールは無視し、休みの時間をフルに活用してもらうことは長期的な視点から社員の健康面にとって良いことかもしれないと彼は期待している。 gDNAプロジェクトは2012年から始まり現在も進行中だ。Googleは「仕事にかかわる社員の経験」を長期に亘って様々な角度から進めようとしている。しかし、実施数年で雇用者・起業家側と従業員の間で仕事に対する認識の違いがすでに明らかになりつつあるのだ。

まとめ

ワーク・ライフ・バランスやインテグレーションの実践がなかなか難しいのも、仕事に対する認識が起業家と一般社員の間で一致していないことが原因にあるように感じる。仕事こそ生きがいと捉える起業家と、あくまでも業務と捉える一般社員。ここに絶対的な温度差があるからこそ、ワーク・ライフ・バランスは未だに一般社員から強く求められ、ワーク・ライフ・インテグレーションは起業家の生活の根幹となっているのかもしれない。 こういった違いがあるからこそ、起業家・経営者側が社員に彼らと同じマインドで働くことを求めるために、オフィス環境などを整えていくのだろう。雇用側が社員の採用の際にカンパニーフィットを重視するのもそのためだ。 関連記事:Nike、Uber、Ciscoのオフィスはこうして生まれた ー 世界的デザイナーPrimo Orpillaが語る、西海岸オフィススタイルの原点とは 一般社員に起業家と同じマインドを求めること自体は企業の成長にとって好ましいことだろう。一方で社員とその家族の健康や幸福度を重視することもまた社員の意欲を高め、企業の成長にとって必要なことだ。 現時点ではどちらがいいのか明確な答えはないが、ただ明らかなのは、すでに「いつでも」「どこでも」仕事ができてしまう環境になっているということだ。そんな環境のなかで時には自らテクノロジーと離れ、リラックスできる時間を確保するなど、社員がうまく自らに最適なバランスを見つけだすことがこれからは求められる。 本記事をきっかけにご自身のワークとライフのバランスあるいはインテグレーションの程度について、改めて考えてみてはいかがだろうか。 参考:

Google’s Scientific Approach to Work-Life Balance (and Much More) The Best Companies For Work-Life Balance The Gospel of Hard Work, According to Silicon Valley Jeff Bezos To Donald Trump And Peter Thiel: Develop A Thick Skin Q&A with Jack Dorsey What it's like to work for legendary NFL coach Bill Belichick, whose interview process takes days

*本記事はフロンティアコンサルティング様のブログ、Worker’s Resortより転載いたしました。

デザイン思考の実践に最適な4つのオフィスアイテム

「デザイン思考」という言葉が世間に浸透しつつあり、ワークショップを通じてその考え方を導入する企業が増えているが、実はそのワークショップを行う環境もまた重要である。今回はアメリカ西海岸の超有名スタートアップをはじめ、様々な企業でより活発な議論を促進するために用意されているデザイン思考の環境作りを紹介したい。 関連記事:【やっぱりよくわからない】デザイン思考ってなに?

デザイン思考を再確認

デザイン思考を理解する上で大前提として必要なのは、ここで使われる「デザイン」の意味を把握することである。その定義は1つに収まらない。「デザイン」と聞いて最初に思い浮かぶのが、「見た目の良さを追求する行為」。デザイナーによる自己表現の場としてのイメージが最初に来る人が多いのではないだろうか。 「デザイン思考」という時に使われている「デザイン」という言葉はそういったデザイン作業そのものではなく、ユーザーや顧客を深く理解し、問題解決を行うというデザインの本質的な意味合いやデザイナーのマインドセットの部分を指す。そのため、技術起点やビジネス起点で開発をするのではなく、常にユーザーを中心に考え、彼らの問題解決に向けてプロトタイプと改善を繰り返して、常により良いプロダクトを目指すのが大きな特徴である。 画像:Hasso Platnner Institut d.schoolのウェブサイトより

デザイン思考と環境づくりの関係性

このようにデザイン思考は、ユーザーとの密なインタラクションを基に得た情報を社内で整理した上で、彼らの問題を解決するためのアイデアを活発に出していくという作業が中心になることから、通常の会議室とは少し異なるクリエイティブな環境が必要になる。デザイン思考発祥の地、d.schoolでもその特徴を前面に押し出したスペースを用意しており、先日こちらの記事でも紹介した書籍『Make Space』に彼らの環境づくりの取り組みが事細かに書かれている。 この本の冒頭において、職場における上下関係がオープンな会話を妨げるとして、いかに社員全員が対等に会話できるような環境を目指したか、という記述がある。「d.schoolの教室をのぞいて見ても誰が教授で誰が学生か見分けるのはほぼ不可能だと思う」とあるように、目標はあくまでユーザーが抱える問題の解決であって、それを達成するために皆が平等な関係でブレストを行っていくというのは重要項目の1つだったようだ。 そのような環境をどのように作ることができるのか。実はその環境を作ることは決して難しいわけではなく、身近なオフィス用品で環境を整えることができる。

デザイン思考を進めるのに必要な4つの道具

必要なものは基本的に次の4つである。 ・付箋 昔からアイディエーションでよく使われてきたこのアイテムは、個人のアイデアをグループで共有するときに最適なものである。ポストイットが代表的なものであり、今では大きさにもバリエーションがあって、それぞれ用途にあった使い方が可能である。 ・マーカー これは説明不要だろう。付箋に書く文字を太くすることでアイデアの共有もスムーズになる。 ・アイデアペイント 壁に塗料を塗って自作で「書ける壁」を作ることが可能。ホワイトボードよりも幅広いスペースに書き込むことができるためアイデアを膨らませやすい。もちろんホワイトボードでも代用できる。 余談であるが、先日インタビューを行った世界的オフィスデザイナー、Primo Orpilla氏はこのアイデアペイントを移動型バンの車内に施し、実際にアメリカ国内の様々な場所でアイディエーションを行ったという。 画像:アイデアペイントの公式ウェブサイトより ・イーゼルパッド 巨大版ポストイット。イーゼルとはもともとデッサンで使われるスタンドのことを指すが、ここでも個人用キャンバスになる。また上記のアイデアペイントやホワイトボードで書くスペースがなくなったときには、壁に貼り付けて付箋を貼ったりマーカーで書き込んだりするスペースを増やすことができる。 画像:アマゾンの商品ページより

「4種の神器」の活用例

上記のものがデザイン思考プロセスの中でどのように使われているのか。実際にbtraxの社内ワークショップで使われている様子を紹介したい。下の写真はエンパシー・マップを作成している様子である。エンパシー・マップとは、ユーザーが見聞きし、考え、実際に行動していることを仕分けし、情報を整理する時に使用するフレームワークのことである。 デザイン思考のプロセスにおいて、ユーザーのためのプロダクトを作るには、ユーザーの潜在的ニーズを掘り起こすことが重要になる。特定のユーザーが抱えている問題を自分で体験してみる、彼らがどのように生活しているかを観察もしくは直接話を聞いてみる、といった方法を通して、彼らが抱えているニーズを洗い出すのである。 そしてこの整理した情報から「ユーザーが不都合・苦痛に感じるだろう」というものを”Pain”リストに、逆に「ユーザーが喜び、便利だと感じるだろう」というものを”Gain”リストにそれぞれ書き込むことで、解決すべき問題を特定する。 この事例からエンパシー・マップ作成において、上で挙げた4つのアイテムを実際に使っているのがわかる。まずアイデアペイントに図を書き込み、そこに全員で付箋を貼っていく。付箋に書かれた文字にはある程度個人の筆跡の特徴が出るものの、誰のものかまでは特定しづらい。同じ色の付箋にそれぞれ書き出すことで自身の発言力等に物怖じすることなくアイデア出しをすることができる。平等な発言権を確保できる環境を演出しやすい。 もしワークショップ形式で参加者全員がそれぞれ自身のビジネスのターゲットユーザーへの共感を行うのであれば、イーゼルパッドに図を描いて付箋を貼っていくことも可能。アイデアペイントのスペースを全員に提供しなくても開催できる。 付箋は貼り直していくことが可能なので、出たアイデアを最終的にカテゴライズをすることで情報を整理し、すぐに議論に移ることができる。目の前で出たアイデアを全員で確認しながら、効率の良いミーティングを行うことが可能だ。 これはデザイン思考ワークショップのほんの一部であり、この後もこの4つのアイテムを駆使しながらアイデアを膨らませていくことになる。このように身近なものを使ってデザイン思考の環境を整えることができる。デザイン思考に興味を持ち始めた企業にこそ、ぜひ会議室にこれら「4種の神器」を取り入れることをお勧めしたい。 *本記事はフロンティアコンサルティング様のブログ、Worker’s Resortより転載いたしました。

オフィスデザインの軸となる“企業文化への理解”とは

サンフランシスコ・フィナンシャル地区に拠点を置く建築兼インテリアデザイン事務所、Design Blitz。地区の中でも比較的静かな通りに佇むこのデザインスタジオは、これまで世界中の企業に大きな影響を与えてきた。 Microsoftサンフランシスコオフィスを始め、Autodesk、バンダイナムコ、Dropbox、Instacart、Skype、Slack, Spotify等、名だたるテック企業から、カリフォルニア大学バークレー校のアカデミックイノベーションスタジオ等の教育施設まで、様々な建物が彼らの作品の一つとなっている。 今回、同社代表兼クリエイティブディレクターのSeth Hanley氏にインタビューを実施。彼が手掛けてきたプロジェクトの話を伺った。 関連記事: ・Studio O+A に学ぶ 生産性を上げるオフィスデザイン4つの原則イノベーションを生み出すオフィスデザインを考える【DFI 2017より】 私たちはこれまでアメリカ国外を含む様々な地域でのテック企業のオフィスデザインを担当してきました。最初はそれこそサンフランシスコ市内のプロジェクトが中心でしたが、幸運にも私たちのデザインは好評で、いつの間にか少しずつその輪を広げていきました。今でもこのスタジオから歩ける距離でいくつものオフィスが私たちのデザインであることを思うととても誇らしい気持ちです。 サンフランシスコ・ベイエリア周辺で手掛けたオフィスの一つに、全米でも指折りのオフィス家具の販売企業である、One Workplaceのオフィスがあります。大きな倉庫内にある広々としたオープンスペースを持ったオフィスの中央に、特徴的なシンボルとなるS字のスペースを取り入れました。 同社は世界でも有数のオフィス家具メーカー、Steelcaseの製品を取り扱っている、サンフランシスコ・ベイエリア唯一の代理店ということもあり、そのS字の上部に開放的に見渡せるミーティングルームを置くことで、同社社員が実際に使っているSteelcase製品をショールームのような体験で顧客に見てもらえる工夫が施してあります。初めはインテリアデザインだけという話でしたが、このデザインが高く評価され、外観を担当することにもなりました。

社員の世代間の違いに着目する

1925年に創業したこのOne Workplaceを含め、これまでの伝統的な企業の間で今トレンドとなっているのは、上に積み上げるような高層階の建築デザインよりも、大きな敷地を確保し、縦よりも横に広がりを見せることができるフラットなデザインです。以前よりも働き方の違いが大きく異なる世代が同じワークスペースで共に働いていますが、多くの企業がそのような社員の交流を促すというところに一つの課題を感じている段階です。 こういった問題がある中で、そのような多くの世代をいくつもの階に分けてしまうより1つの広い階に置いたほうが、普段話すことがあまりない社員同士に顔を合わせる機会を与えることができます。結果として世代間における活発な交流が期待できるのです。 上の世代に行くほど、新しくデザインされたオフィスに抵抗感を持つ人は少なくありません。そういった人たちに私たちがよく訴えかけるのは、デザイナーの仕事は今まであった何かを取り上げるのではなく、さらに何かを付け足していく、ということです。そのオフィスで働く人にとって自分好みの働き方を実現できるとなれば、前よりもずっと良い体験ができるというのは説明に難くないと思います。 チームとしてまとまって働けるような環境を作る、これはもちろんオフィスに必要なことですが、同時に1人になれるような空間や2、3人で気軽に集まれる部屋を用意してあげることも重要です。サンフランシスコ・ベリエリアでオフィスデザインが注目されているのは、そういった多くのワークスタイルオプションを社員に提示し、オフィスにいる全員が満足にいられるような多彩な空間を提供しているからなのです。 写真は、サンフランシスコにあるSquaretradeオフィス

真剣でありつつも、遊び心を持って楽しむ

働く、ということに真剣な人ほどオフィスデザインに興味を持ってもらいたいと思っています。2016年に完成したバンダイナムコのプロジェクトは特に良い例です。 このプロジェクトは「真剣であること」そして「遊び心のある楽しいものであること」の2つのバランスを取ることに努力を費やしました。まず1つ目の「真剣であること」というのは、同社で重要な仕事に取り組む真剣な社員に貢献できるように、私たち自身も真剣に向き合ってデザインしたところです。人が窮屈に感じたり逆に他の人との繋がりを失うように感じたりしないようにしながら、数多くのミーティングルームを用意して企業の働き方に合った空間を提供しました。 そしてもう1つは楽しむ要素を取り入れている点です。同社の代表的なゲームであるパックマンからインスパイアを受け、オフィスに細めの通路をいくつも張り巡らし、遊び心とブランドの世界を演出しました。こういった細部にわたる工夫をいくつも取り入れて楽しい世界を作り、クリエイティブかつ楽しい空間を作って、人が集まるようなオフィスを作ることは私たちデザイナーにとっても心地の良いことです。 この2つの要素をデザインに取り入れることは非常に難しい課題でしたが、真剣さと楽しさの共存、そこに企業の文化を表現していく要素を織り混ぜるということを考えると、非常に面白いプロジェクトでもありました。

訪問者に企業のブランド力と国の文化の両方を感じさせるオフィス

オーストラリア・メルボルンにあるZendeskオフィスは私たちが特に記憶しているプロジェクトです。クライアントも素晴らしく、建築デザインとしての下地が良かったこともあって、私たちのインテリアデザインは非常に高いスタート地点から動き出しました。 このオフィスのメインユーザーは主に同社のエンジニアチームであったため、静かな集中スペースとコラボレーションのためのオープンスペースの両方を用意しました。電話ブースやパソコン作業用のバーテーブルエリア、プライバシーを保護できるミーティングルームや気軽に集まれるラウンジスペース、さらに高さを調節できるデスクスペースを導入して、どこでも作業ができるようになっています。 オフィスの中央に置かれたコラボレーティブスペース Zendesk本社であるサンフランシスコオフィスも強く記憶に残っているプロジェクトです。こちらも歴史的な建物で建築物としての素材も素晴らしく、そこに近代的なデザインを組み込むという非常に難しいプロジェクトでもありました。その素材を美しく見せるために、何かを付け足すということよりも、何を取り払えるか、何か不必要なものはないか、という点に注力しました。写真で見えるレンガ壁はヤスリで擦り、よりレンガが印象強く見えるようにしています。このように素材を活かす方法を考えてから、仕事環境に適合した空間を整えていく、という手順をとりました。 Zendeskオフィスのプロジェクトは4カ国、計5つの都市で行いました。その5つのプロジェクトを通して、企業の一貫した文化を反映させながら、その国の特徴を表現していくことは非常に面白い試みでした。人がそのオフィスに入った時にどのような会社にいるのかわかってもらうことは大切ですが、それと同時にどの国、どの場所にいるのかを感じてもらえるようにすることも大事なポイントだったのです。 Zendeskの核となるブランドイメージは空気感、謙虚さ、可愛らしさ、率直さ。全オフィスを通して、余計なものはなるべく置かないミニマリスト的な空間を目指し、木を用いてオーガニック感を表現、白い壁で自然な色合いを強調しています。 アイルランド・ダブリンオフィス イギリス・ロンドンオフィス アメリカ・ウィスコンシン州マディソンオフィス アメリカ国外でのプロジェクトはこれ以外にもたくさんありましたが、どれも楽しい経験ばかりです。その国でかっこいいとされるデザインに触れ、何がかっこいいとされているか、そのイメージを掴むのです。そして私たちが学べるものは何か、私たちが持っている知識とどのように融合できるか、を考えていきます。 また、私たちのデザインに対してその国の人々がどのようにアプローチし、反応するかを見ることもできます。デザインの意味というのは国によって変わり、デザインに求められることもおのずと変わります。そういった自分にとって新しい考えに刺激を受けて自分のデザイン技術をリフレッシュさせていきます。多くの学びをそれぞれの国のデザインから得て、その理解を表現したものが私たちのデザインとなるのです。 *本記事はフロンティアコンサルティング様のブログ、Worker's Resortより転載いたしました。第2部以降はこちらよりお読みください。 関連記事: ・優れたUXを生み出す鍵はオフィスにある【インタビュー】Pinterest ケイティ・バルセロナ氏サンフランシスコスタイルを実践 – ベイエリア風オフィス空間づくり

Studio O+AのPrincipalに聞く、西海岸流オフィスデザインの原点とは【Primo Orpilla氏 インタビュー#1】

社員は直感的に働きたい場所をわかっています。オフィスデザインはその直感をサポートできるような空間を提供することなのです。 サンフランシスコ・ベイエリアで数々のスタートアップに取り入れられ、今では世界的に有名となった西海岸流オフィスデザイン。それを牽引するのがStudio O+Aである。彼らはこれまでFacebook、Microsoft、Nike、Cisco、Yelp、Uberといった企業のオフィスデザインを担当、昨年には全米で最も大きな影響を与えたデザインに贈られるCooper-Hewitt Nation Design Awardのインテリアデザイン部門を受賞した。 今回はそのStudio O+AのPrincipalであり、オフィスはもちろんプロダクトデザインも手掛けるPrimo Orpillaへインタビューを実施。彼の作品の一つである、移動型ミーティングルームバンの中で彼が語った西海岸スタイルへの想いを3回に分けてご紹介したい。 第1作目となるこの記事では、西海岸流のオフィスがどのようにして多様な働き方を推奨するような場になったのか、Primoがオフィスデザイナーになるまでの経緯と共にお伝えする。 関連記事:  

西海岸の文化とオフィスデザインの発展

ここ、ベイエリアはオフィスデザインの発展にとって非常に特別な地域です。シリコンバレーからサンフランシスコまではたったの50マイルしか離れておらず、小さくコンパクトにまとまっています。そこにお互いに似たような気質を持った若い起業家たちが世界中から多く集まり、会社の成長と共に試行錯誤を繰り返して、働く環境を整えていく姿をこの目で見てきました。 このような環境の中でベイエリアという地域にとって「何が良いデザインなのか」「人々により大きな影響力を与えるデザインとは何なのか」という点について、様々な企業を通して記録していきながら少しずつ明確にしていきました。O+Aがインスパイアされてきたもののほとんどは企業カルチャーや企業概念をどのようにオフィスで表現しているか、という各企業の努力です。 2012年制作のYelpオフィス。「雑貨屋(General Store)」をテーマに、デザインの一部としてキャンディ等を売り物のように陳列し、遊び心を演出している。

ヒエラルキーを取り除くことで「集合的な脳」を生み出す

私が25年前にこの会社を立ち上げて以来、オフィスデザインに起きた変化と言えば、今まで存在していた社内でのヒエラルキーが取っ払われたことだと思います。分厚い壁で覆われた、プライベートオフィスに閉じこもっていた役員は、オープンプランに設計されたオフィス内の様々な場所で仕事をするようになりました。オフィスはより人の動きがでる集合的な空間になり、それとともにイノベーティブな発想がどこにでも起きるようになっていきました。 ヒエラルキーが深く根付き、役職やチームによって部屋が別れている組織では、アイディアが生まれるスピードは遅くなる傾向にあります。マネージャー、ディレクターなどを逐一通さなければならないと考えると、それは必然であるように思います。 新しいアイディアを歓迎するベイエリアの企業がそれをやめたことは理にかなっています。より多くの人がブレインストーミングに参加することによって、一つの集合的な脳(Collective Brain)が生まれることに繋がるのです。つまり、上司一人が考えるのではなく、70の頭脳が集まればより多くのアイディアが生まれる、というわけです。より多くの世代がコラボレートするという意味でも、これは非常に大切なことなのです。 Yelpオフィスでは様々な場所で会話が生まれている。

アイディアを共有しやすいオフィスが会社を活性化させる

「学ぶにはまず失敗しろ(”Fail first to learn”)」という言葉にもあるように、社員にアイディアを試しやすい環境を提供することは私たちが大切にしている概念です。もし失敗するようなアイディアが出てきても「よくぞこういうアイディアを出してくれた」と尊重することで、社員をより元気づけることができます。これは非常にベイエリアらしいことです。 他の多くの企業では、未だに社員のアイディアは上司によってコントロールされ、役員と共有する機会を設けることは容易ではありません。しかしベイエリアではまったくの逆で、役員や上司は社員により積極的にアイディアを共有してほしいと常に期待しています。そうすることで、問題がどこかで滞ることもなく、社員自身もより会社への貢献度を感じるようになります。 私たちO+Aができることは、このような環境を整えることであり、「コミュニティシンキング」と呼べる、集団的な脳を養う環境を作り上げることなのです。

オフィスは仕事をするためだけの場所ではない

私がオフィスデザイナーになろうと思ったのは、それまで深く考えられずにデザインされたオフィスをあまりにも多く見てきたことがきっかけでした。それに対して私は常々、責任を感じてきました。 我々アメリカ人も日本人と同じように長時間、上司・部下の関係がはっきりとしたヒエラルキーの中で働いてきました。しかしこのような職場の仕組みはすべて環境が生み出すものなのです。そのような場所で職場外でも交流のある友人を作ったり、食事をしたり、起きている時間のほとんどを使うことになります。そこで思ったのが、「ここを最高の場所にしよう」ということです。 仕事以外にも生活のほとんどが行われる場所であるからこそ、そこにいたい、と思うような場所を目指して環境を整えることは当然のことだと思います。「もう5時になったからオフィスを出よう」と時計を気にするような環境づくりはしたくありません。 2012年に担当した、Evernoteのオフィス。レセプションエリアはコーヒーとドーナッツが楽しめる意心地の良い空間にもなっている。

オフィスとは「人間らしさ」を取り戻す場所

私たちの生活は今日テクノロジーで溢れていますが、これが必ずしも快適な環境作りに繋がるとは限りません。実際に、テクノロジーが浸透しすぎているあまりに私たちは誰とも話さなくなっています。誰かに連絡を取るにしても、メールで済まし、電話をしようともしません。人と人との交流は少しずつ減っているように思います。 以前ロサンゼルスにあるコリアンタウンで、多くの若者が友人との時間を楽しもうと一緒に外食に来ているにもかかわらず、彼らのほとんどがスマートフォンを見続けているという光景を目にしました。本来、友人との食事は他人との交流を楽しむ場面、いわゆるソーシャルアクティビティであるべきです。それにもかかわらず、スマートフォンに夢中になって離れられない人々がいることを目の当たりにしました。 ここでさらに注意すべきなのは、これは若者層に限ったことではなく、全ての世代で起こっていることだということです。そしてこれはロサンゼルスに限った話ではありません。 今日のオフィスデザインでできることは働く人々を「人間らしく」させることだと思います。ワークプレイスでは古き良き昔の空間、テクノロジーがまるでなかったアナログ時代のスペースを作り出すことが可能です。スマホをしばらく置いて人と話すことで、一緒に働いている同僚についてもっと知ることができます。彼らが単に仕事で何をしているかだけでなく、それ以上のことも含めてです。 テクノロジーが今やあまりにも生産性を向上させるが故に、私たちはテクノロジーに身を任せてしまい、自分自身に時間を使うことがなくなっています。オフィスとはその時間を取り戻す場所なのです。

理想とすべきオフィスは学校と似ている

私たちは、テクノロジーと上手に距離を置く生活を実際に学生生活の中で自然に送っています。授業を受け、終わったあとは教科書やノートを置いて友人とカフェに行ったり、ビールやカクテルを飲みにバーに行ったりすることもあります。そうしてバイトや勉強を忘れて時を楽しむのです。 私たちがオフィスをデザインするときも、オフィスにおける生活の様々なヒントを学生生活から得ています。オフィスを学校のキャンパスと同じように捉えていると言ってもいいぐらいです。これからビジネスを支えるミレニアル世代の若者は皆このような学生生活から卒業したばかりなので、このような空間を作ってあげることでより快適に感じ、スマートフォンを始めとしたテクノロジーがなくてもリラックスできるようになります。結果として、彼らには非常に魅力的な空間として映るのです。 2011年デザインのワシントン州レッドモンドにあるMicrosoft Building 4。キャンパスにある図書館のように個人のワークスペース、ミーティングスペース、レクリエーションスペースになる空間が用意されている。   このように自分自身が学生時代、一学生として使っていた多種多様なスペースは、ワークプレイスでも実に実用的なスペースとなります。なぜならこういったスペースではどこでも仕事ができるからです。少し人が集まるような場所にいたければカフェ、それでなおかつ静かな場所がよければ図書館に行くし、自然の中で一人がいいときには広場や公園にいく。今挙げたものはすべて異なるスペースですが、私たちは今自分がベストなパフォーマンスを出せる環境を直感的にわかっているものです。 このように、一人ひとりが直感に応じて選ぶ場所をいくつも持っていることを、私は「スペースの分布範囲(the spectrum of space)」と呼んでいますが、ワークプレイスはこのように直感をサポートできるように準備された空間であるべきなのです。 思い出してみてください。あなたは教室や自分の部屋だけでなくキャンパス内の至る所で勉強して、しかもそれはすべて異なる理由であったはずです。理由ははっきりとはわからないけれども、友達と一緒に勉強したいときもあれば、一人で静かに集中したいとき、あるいはカフェテリアのように人がたくさんいて活発な会話が起きている中で一人で勉強したいときもあったはずです。ただ人がいる場所にいたい、なんてこともよくあることです。 ニューヨークにあるAce Hotel。ホテルのロビーであるにもかかわらず、多くの若者が個人作業をしに訪れる。   ニューヨークやロンドンにあるAce Hotelが若者に人気なのはそこに理由があります。ロビーには長いテーブルに大きなライトがあり、若者はそこにノートパソコンと共に現れますが、彼らは誰とも話をしません。ただ誰か人が集まる場所にいたいのです。そこで飲み物を頼み、自分の作業に没頭します。だから内気な人も社交的な人も同じスペースにいることになります。 私たちの周りには様々な好みのワークスタイルを持つ人がいます。そして彼らの好みも状況に応じて変わることが往々にしてあります。だから私たちはそういう人たちのためにもスペースを作っていく必要があるのです。 *本記事はフロンティアコンサルティング様のブログ、Worker's Resortより転載いたしました。第二部以降はこちらよりお読みください。 関連記事: ・優れたUXを生み出す鍵はオフィスにある【インタビュー】Pinterest ケイティ・バルセロナ氏サンフランシスコスタイルを実践 – ベイエリア風オフィス空間づくり

イノベーションを生み出すオフィスデザインを考える【DFI 2017より】

Google、Pinterest、Facebook、Airbnb、Dropbox、これらに共通することを挙げるとしたら、読者の皆さんが真っ先に思い浮かぶのは何だろうか?サンフランシスコ・シリコンバレーで創業したこと、多大なる成功を収めていること、グローバルな企業であること、様々な共通点があるだろう。しかし、ここで特に着目したいのは、”従業員のために設計されたオフィス”を持っていることだ。 日本では、従業員のことを第一に考えてオフィスを設計するというよりも既に作られたオフィスに従業員が順応せざる負えないことの方が一般的なのではないだろうか。 そこで今回ご紹介したいのが、弊社が先月開催した”デザイン x 経営”をメインテーマとしたカンファレンスDESIGN for Innovation 2017で行ったオフィスデザインに関するセッションで話し合われた内容だ。 オフィスデザインに精通するエキスパートであるDesign BlitzのSeth Hanley氏とフロンティアコンサルティングの稲田晋司氏を迎えて、①オフィス環境とイノベーション創出の関係性、②社内コミュニケーションの活性化、③オフィスデザインの最新トレンドという3つの観点から、イノベーションを生み出すオフィスデザインとは何か紐解いていきたい。 関連記事:

ゲストスピーカーのご紹介

Seth Hanley氏 Design BlitzのPrincipal & Co-founderを務める傍ら、コードコンプライアンスや技術的な側面でチームをリードしていく。Leeds Metropolitan Universityで建築学の学士号、Oxford Brooks Universityで建築学とアーバンデザインのPgDipを取得。 これまでにSkype, Comcast, Zendesk, SquareTradeなど数々の企業のプロジェクトに携わっている。     稲田 晋司氏 1980年、東京都出身。計画系の建築設計事務所を経て、オフィスの設計業界へ。フロンティアコンサルティングに創業期より従事し、2009年に一級建築士を取得。 執行役員として、グループ全体に跨る設計デザイン部門を統括し、2017年のアメリカ支社設立に伴い、Frontier Consulting America, Inc.のCEOを兼任。     ブランドン・K・ヒル サンフランシスコ州立大学デザイン科卒。サンフランシスコに本社のあるエクスペリエンスデザイン会社btraxフォウンダー&CEO。日米の企業に対してブランディング、グローバル展開コンサルティング、UXデザインサービスを提供。 経済産業省 始動プロジェクト公式メンター、サンフランシスコ市政府アドバイザー。  

1. オフィス環境の設計とイノベーション創出の関係性

ブランドン:オフィス環境の設計とイノベーションの関係性について伺います。企業がイノベーションを起こすためにオフィスに求められる役割とは何でしょうか? Seth氏 (以下敬称略):オフィスはイノベーションを生み出すためにとても重要な役割を果たします。そもそもシリコンバレーの企業では、従業員の世代、国籍、バッググラウンドが多様な環境で働くことが当たり前になっています。 そんな環境の中で従業員が効率的に働けるようにするのがオフィスに求められている役割です。そのため、彼らに与えられたタスクが個人ワークなのかチームワークなのか、どの時間帯に働きたいのか、そして彼らの感情等を考慮した上でオフィスはデザインされなければいけません。そうすることで彼らが好む環境を作り出し、それが効率性を上げることになり、最終的にはイノベーションを起こすことに繋がるのです。 ブランドン:フロンティアコンサルティングさんも西海岸流のオフィス環境を日本に浸透させていますが、今後どのような取り組みをされたいですか? 稲田:そもそもサンフランシスコと日本では、オフィスに対する考え方が異なります。「どんなオフィスがいいのか?」「どのようなカルチャーを作るべきなのか?」といった疑問に対して答えてくれる情報が日本にはまだまだ少ないと思います。 もちろん、そういった情報が載っているプロ向けの専門誌もありますが内容がとても高度なので、弊社はきちんと日本にローカライズした情報を伝えていきたいです。また、海外支店を持つような企業に対しては、国によって抱える問題や社会が違うので、現地に適した情報を発信したいと考えています。 そして、何よりも従業員が気持ちよく働ける環境を作ることが大切です。心と身体が健康的な状態を維持できるような環境を提供することがイノベーション創出の第一歩なのではないでしょうか。

2. 社内コミュニケーションの活性化

ブランドン:日本とサンフランシスコのオフィスを比べた際、どのような違いを感じますか? 稲田:やはり、日本のオフィスは島型がまだまだ多いですね。部署ごとに島(デスク)が分かれ、上司が窓側に座るのが一般的です。そして、マネジメント層には社長室や部長室があります。なぜこのような状況になるのかというと、お互い適度な距離を保つことで仕事上の信頼関係性を維持できると考えられているからです。とは言いつつも、上司が遠くから部下を監視しているようにも思えますよね。 それに比べてサンフランシスコでは、「今日どこに社長が座っているのかわからない!」というほどに、上司に特定の部屋やデスクがないケースが多いのです。なぜなら、社内での監視ではなく、社内でのコミュニケーションを重要視しているから、このようなスタイルが浸透しているのだと思います。 Seth:そうですね。オフィスは人を集めるプラットフォームのようなものなので、コミュニケーションが取りやすい環境を作ることが必要です。面白いことに、最近の傾向として1人で部屋にこもって作業するよりもソーシャルな環境に身を置いて作業することの方が好まれています。 関連記事:アメリカ企業から学ぶ新たなオフィスデザイン Blitzが手がけたマイクロソフトのサンフランシスコオフィス(Design by Design Blitz) ©Photography by Cortez Media Group, http://cortezmediagroup.com ブランドン:オフィスといえばビジネスミーティングがつきものですが、サンフランシスコ、日本ではどのようにミーティングの効率化を図っていますか? Seth:個人的にミーティングは好きではありませんね。なぜなら、ミーティングで問題を話し合うよりも、その問題をどう解決していくのか手を動かしながら解決していきたいからです。テクノロジー企業はこのような考え方を持つ人が多いのですが、それ以外の企業はミーティングに対してルールや仕組みを決めて、「30分したら、皆解散しましょう!」と時間を決めてミーティングを行うことが重要です。 稲田:私は、まずは会社の制度から変えるべきだと思います。弊社でもクライアント様からミーティングを効率よく行いたいという要望を受けることがあります。 しかし、ミーティングルームの数を減らすことは可能でも、ミーティングの時間を短くすることはとても難しいのです。なぜなら、日本ではまずはミーティングを設定してその場で話すという流れが定着しているからです。 その流れを払拭する為には、ミーティングを開始する前にアジェンダを共有し、参加者全員がミーティングまでに話す内容を準備するという意識の徹底が重要です。 関連記事:海外から見た日本式ミーティングの謎

3. エキスパート達に聞くオフィスデザインの最新トレンド

ブランドン:サンフランシスコのオフィスでは、バーカウンターやカフェ、ソファーなどの設備を良く目にします。日本では、今後そのような”デスク以外の働くスペース”を設けるべきなのでしょうか? 稲田:日本でも、その時々のシチュエーションによって働く場所を変える、ABW(Activity Based Working)に関心を持つ企業が増えてきています。しかし、どの企業もまずオフィスの面積が少ないという課題に直面します。 固定席を外したり、デスク以外で働くスペースを設けることは、日本の文化的にまだまだ難しいのです。それに比べてサンフランシスコは使用できる面積が広いため、固定席を維持しつつも別に働くスペースを確保することができます。なので、日本では限られたスペースの中で選択肢をどう増やしていくかが今後の大きな課題になると思います。 Seth:昨今サンフランシスコ・シリコンバレーの企業では、従業員の席が固定席からフリーアドレスに変わるという現象が起き始めています。もちろん、自分のデスクがあると日々動き回る必要はないのですが、多種多様な働き場所を提供することで効率性がより上がるのではないでしょうか。 フロンティアコンサルティング様が手がけたオフィスデザインの事例 ©FRONTIER CONSULTING Co., Ltd. ブランドン:様々な人達が働く中、ダイバーシティーはオフィスデザインにどう影響してい るのでしょうか?また、日本企業はどうダイバーシティーに向き合えばいいのでしょう? Seth:私たちが心掛けているのは、1つの企業または組織の為ではなく、その中で働く人1人1人の為にオフィスをデザインするということです。すべての従業員に対して同じ条件で自由に働ける場所を与えるのです。 稲田:日本では、Sethさんが話してくれた考え方はまだ新たな領域だと思います。働く人たちの経験や文化の違いをきちんと把握しきれていないので、どんなオフィス環境を提供するべきか、ありったけの情報を集めて実践してみることが大事です。そして、文化が違っても共通する価値観は必ずあると思うので、それが何かを見つけることが必要ですね。

セッションを終えて

変わることの大切さとぶれない大切さ この2つがあってイノベーションが生まれるのです 稲田氏が冒頭で話してくれたこの言葉は、非常に印象深いものであった。昨今『働き方改革』が騒がれる中、多くの企業が従業員の働き方について考え直すことが求められている。 労働時間、雇用形態、ワークライフバランスなど、改善しなければならないことは山ほどあるのかもしれない。しかし、だからといって全てを変える必要があるのではなく、受け継がれてきた企業カルチャーやミッションなどブレないものも大切にすることで、はじめてオフィス環境にイノベーションが生まれるのではないだろうか。 関連記事:オフィスへの投資を無駄にしないデザインの捉え方